第35章 ・牛島兄妹、留守番をする その3
そうして若利が帰ってきた。
「兄様、おかえりなさい。」
「ただいま。」
いつものように義兄を迎えつつも文緒は早速切り出した。
「兄様、今日は何かありましたか。」
「何故だ。」
「五色君が私を見てやたら嫁と言ってくる上に知らない方からバレー部の牛島の嫁だとヒソヒソ言われました。びっくりしてしまって。」
「俺にもよくわからない。」
「そうですか。」
「ただ五色が昼に文緒を嫁にするのかと聞いてきた。」
文緒はズルっとなった。
「それで兄様はどう答えられたんです。」
「出来るかどうかはわからないと言った。」
「え。」
顔を赤くする文緒、いくら天然お嬢様でもそれはつまりとつい思ってしまう。
「出来たらどうするのかとも聞かれたが瀬見に答えるなと言われた。」
瀬見の判断は正しいと思うが淡々と語る若利に対し文緒は落ち着かなくなってきた。
「あの、兄様、実際の所はどうなんでしょう。」
後で考えたらよく聞けたものだと文緒は思う。しかも若利は答えた。
「お前をずっと側に置く為にはそうしたい所だが、まだ先の話だ。」
「兄様。」
「もう少し待て。」
「はい。」
ドキドキしながら文緒は頷いてそのまま流しかけたがふと気がつく。
「兄様、それと知らない人に言われたのとの関係は。」
「食堂で話していたから聞こえたのかもしれない。」
「何て事っ。」
文緒は飛び上がった。とんでもない事になっている。
「明日五色君に文句を言っておきます。」
「気にせずとも良いだろう。」
「兄様お願いですから少しは気にしてください。」
「そういうものか。」
「ああもう。」
あまりに鈍感な義兄に文緒は頭を抱えた。
「頭が痛むようなら明日医者に行け。」
「いえ兄様、そうではなく。」
ただでさえ昼間に五色の相手で疲れ気味だった文緒は駄目だ今はここでやめとこうと思った。
「ご飯にされますか。」
「ああ。」
「洗濯するものは。」
「後で自分で出す。」
「ではお弁当箱を先に引き取ります。」
「ああ。」
文緒は若利から空の弁当箱を引き取りそのまま台所に行こうとしたのだが、