第34章 ・牛島兄妹、留守番をする その2
それはともかくとして当面の牛島文緒の悩みはご飯どうしようである。休み時間に家の冷蔵庫に残っているもの、義兄の若利が食する量を思い浮かべながら頭は必死で思考している。それは良いのだが、
「冷蔵庫に野菜が残ってたからあれは消費するとして、お弁当はお肉メインだったから晩はお魚かな。でも兄様かなり食べるからおかず増やさないと。」
口から思考がだだ漏れなのはどうかと思われる。1-4の連中は牛島が何だかブツブツ言ってるどうしたんだと顔を見合わせていて、隣の席の五色からすると文緒のブツブツがほぼ全部聞こえる為たまったものではなかったようだ。
「おい。」
とうとう五色が文緒を突いた。
「わっ。」
「わっじゃねーよ、お前さっきからブツブツうるさい。」
「あれ、口から出てた。」
焦る文緒に五色はうんと頷く。
「ごめん。」
「いいけどよ。何だ、晩飯考えてんのか。」
「うん。お弁当もどうにかしないと。準備はしとくとして明日起きられるかなぁ。」
「電話してやろーか。」
五色が親切で言っているのは明らかだがクラス内外でいらん話が持ち上がるきっかけになりかねない。流石の文緒でもそれくらいはわかる。
「気持ちだけ受け取っとく。」
「嫌なのかよ。」
「五色君てちょくちょく兄様みたいな事言うね。」
「マジかっ。」
「褒めたんじゃない。」
「紛らわしいぞっ。」
「瀬見さんか白布さんが聞いたら絶対五色君が鈍感だって言うと思う。」
「お前に言われたくないっ。」
「何て事。」
この間、1-4の中で文緒と五色の近くにいた連中は面白がって会話を聞いていたがあまりの事にとうとう吹き出していた。
「みんなどうしたの。」
珍しくここで文緒は教室を見回す。どうしたってと一番近くの席にいた奴が言った。朝からお前らの会話が面白すぎると言われて文緒は首を傾げる。
「納得いかない。」
口調こそもっと柔らかいがあまり変わらない表情とその仕草が五色にその義兄を思い起こさせた事を文緒は知らない。しかも五色君どう思うと伺いを立ててみると当人は既に別の事を考えている様子だった。
「嫁。」
「それ何の話。」
若利との事情が事情なので文緒は内心焦る。