第30章 ・訳がわからない
「若利も困ったもんだな。」
大平が呟いた。
「せめて繊細とか華奢(きゃしゃ)とかあるだろうに。」
「獅音獅音、そんな表現が若利君から出るなら苦労ないって。」
「文緒さんも大変だなぁ。」
「そこは頑張ってもらいましょう。」
白布の発言に一同は一斉に振り向く。しかし白布は淡々と言った。
「牛島さんがあれなら妹には突っ込み役として成長してもらわないと。」
「白布さんどうしたんですか、具合悪いんですか。」
いらんことを言う五色に白布がピキッとなる。慌てた大平が五色を引っ張った。
「工はこっち来ようね。」
「獅音はかーちゃんかよ。」
「そういう天童もこっちね。」
「何でさっ。」
「どう考えてもお子様枠だろお前。」
「英太君ひどいっ。」
「話は逸れましたが」
面倒くさくなったのか白布が強引に話を戻す。
「もうちょっと誰かが突っ込んで行かないと牛島さんは止まりそうにないですから。」
「それ文緒には無理じゃね。」
「あの無駄な遠慮をなんとかしたら可能性はあるでしょ。」
うーんと唸る瀬見に白布はさらりと答えた。
その後、1-4の教室での事である。
「おはよう、五色君。」
「よ、よう。」
「何でじっと見てるの。」
「確かにお前薄いなっ。」
「何が。」
「全体が。」
「訳がわからないんだけど、五色君。」
次章へ続く