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【ハイキュー】ウシワカイモウト

第29章 ・人形ではない


一夜明けた。携帯型映像機器に仕掛けていたアラームがまだ鳴らない大変早い時刻に文緒は目が覚める。まだ出る気になれずそのまま寝床にとどまった。ふと体をぎゅと縮こまらせて思い出すのは昨日義兄の若利に抱きしめられた感覚だ。

"俺もそれ以上を望んでいた。"

文緒が若利を兄以上に思っていたことを告げた時、若利はそう言った。かなり不器用な言い方だったが文緒には十分である。そして一夜明けて多少落ち着いた状態で考えてみると若利も当初は戸惑っていたのではないかと思う。自分でもわからないものを確かめるのは難しい。それでも義兄は逃げず不器用に文緒に告げながら確かめたのだ。だからこそ自分は兄様に惹かれたんだと文緒は思った。

「兄様。」

こっそりと呟き布団に抱きつく。昨日の事を思い出しただけで胸が締め付けられる思いがした。布団の中でコロコロしているうちにまた眠気がこみ上げてきた。

そのまま寝直してしまった文緒だがその間に前代未聞の事が起きていた。

言うまでもないがバレー部の朝練がある若利の朝は早い。とっとと起きてとっとと着替える様は流れるように進められる。文緒は基本的に起きてこない。何かと一生懸命に取り組みたまに1人で外をウロウロする一方義妹は体が少々弱いらしい。故に母は無理をさせて何かあっては困ると若利に合わせた早起きはさせていなかった。チームメイトや他校に過保護と言われる若利だが意外と母が過保護な気もする。だがそれは今置いておこう。

ともあれ今までならとっとと着替えてそのまま次の工程に移っていた。しかしこの日は違う。着替えた若利が一旦部屋を出てそっと向かった先は義妹の部屋だ。音を立てぬようそっと扉を開けてみる。今までならあり得ない事だ。後に若利が語った所によるとこの辺りから何となく義妹の顔を見ないと落ち着かなくなってきていたという。
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