第27章 ・遭遇 義兄編
家路につきながら若利は考えていた。そういえばと思う。先日つい勢いで文緒に愛していると言った。それはそれで本当の事であり伝えた事は間違っていないと確信している。そして瀬見からは突如文緒を泣かせるようならかっさらうと言われた。しかし今になってわからないことがある。あの時自分が言ったのは兄妹としてという意味だったのか。言われた文緒は兄妹としてという意味でとらえたのか。
「そうでなければいけない。」
若利は珍しく独りごちた。
「あれは妹だ。」
呟くそれは自分に言い聞かせていたのだろうか。まるでアニメのようなタイミングで一瞬風が吹いた。
若利は知らない、あの時つい勢いで愛していると伝えた時文緒もまたとうとう自覚していたことを。そして義妹は瀬見から告白され、若利に対して無意識に兄妹以上のものを求めてしまっていた事について悩んでいる事を知らない。
更に余談だが及川は岩泉に怒られていた。
「やり過ぎだぞ、及川。ウシワカ妹をどんだけ気に入ったのか知らねーけど。」
「岩ちゃんだって一緒になって突っ込んでたじゃんっ。でもごめんね、巻き込んじゃって。」
「まったくだわ、見苦しい真似ばっかしやがってこの馬鹿。」
「だって珍しくウシワカちゃんがウジウジしてる感じが鬱陶しかったんだもん。俺はケリつけただけだよ、後はこっちがいつかバレーでへこましたるってだけだね。」
「今更だけどよ、なんつー屈折した野郎だ。」
「俺のハートは複雑なの。」
「表現がいちいちキモイわボゲ。やってくれるぜあの兄妹、面倒なのはクソ川だけで間に合ってるってのに。」
「色々ひどすぎっ。」
「心配すんな、当面は面倒見てやる。」
「手放しで喜べないっ。」
夕方の空にわぁわぁ騒ぐ少年の声が響いた。
次章へ続く