第24章 ・烏と再会
縁下力はじゃあ俺は行くからと走り去っていく。文緒は再度頭を下げて教えてもらった方向へ歩いて行った。文緒は知らない、またポテポテと歩く文緒の後ろ姿を縁下が気付かれないように足を止めて見つめていた事を。
「うーん、しまった。」
縁下は呟く。
「やっぱり戻らせた方が良かったかな。田中と西谷不在つってもあんな天然お嬢様、うちの連中の所へ近づけたら大変な事になるかも。」
しかし時既に遅しである。縁下は何もない事を祈ろうと思いながらまた2年の馬鹿2人を探しにかかったという。
縁下の祈りも虚しく大変な事になった。文緒は程なく休憩中の烏野男子排球部の面々に出くわしたのである。
「文緒さんっ。」
即刻気づいたのは日向である。
「う、ウシワカ妹。」
「あ、日向。影山君も。」
ちょうど気づいた日向達に文緒は呼びかける。たちまちのうちにその場にいた烏野の野郎共が何だ何だと反応した。
「え、え、何で文緒さんがいんのっ。」
「え、えと、気まぐれに寄り道してみた。」
本当は意図的なのだが文緒はつい恥ずかしくなって適当な事を言う。
「そーなんだっ、すっげぇ偶然。」
そのまま信じる日向もどうかと思われる。
「あれ、でも文緒さん上から来たよね。うちの縁下さん見なかった。」
「あの、優しい顔した2年の人ならさっき会った。同じ2年の人達探してるって。まだ探してると思う。」
「そっかー、縁下さんにも会ったんだ。」
「何だか大変そうだね、こっちも。」
「そーなんだよ。」
「日向が人の事言えるワケ。」
「何だよ月島っ、文緒さんの前でまで意地悪言うなっ。」
「関係ないデショ。つーかふーん、この人があのウシワカの妹。」
でかい眼鏡少年にジロジロ見られて文緒は困ってしまう。
「牛島文緒と申します。よろしくお願いします。」
「別に僕はよろしくしたくないから。」
「これは失礼しました。」
「何アンタ、天然なの。」
「違います。天然は兄様です。」
日向に月島と呼ばれた眼鏡少年は馬鹿にした調子で吹き出す。
「にいさまって。」
「兄ですから。」
「そっちじゃない。」
「まぁまぁツッキー、落ち着いて。」
今度はそばかすの少年が口を挟む。