第14章 大地さん。
私が頷いたのを確認すると、大地さんは私からゆっくり離れた。
そして、言う。
「俺、臆病になってた。チームのためとか言いながら、本当は過去のこと引きずって、傷つきたくないって逃げてただけだったのかもしれない。」
「過去……?」
「中学の時から高校上がって少し経った頃まで付き合ってたやつがいたんだ。」
大地さんが話してくれたのは、前に付き合っていた子との終わりについてだった。
中学の時からバレーに情熱を注いでいた大地さんは、彼女との時間も思うように取れなかったらしい。
当然彼女のストレスはたまり、ある日それが爆発した。
バレーと私、どっちが大事なの。
そう聞かれたあと、答えを聞くまでもなく一方的に別れを告げられたという。
「その時、思ったんだよ。ああ、この子は俺のことを本当には好きじゃなかったんだろうなって。
でもそれは、すぐに迷わず彼女の方って答えられなかった俺も同じなんだと思う。」
そうか。
だから、前に好きの意味を聞いた時、
やりたいこととか思いを曲げても、一緒にいたいと思えるのかが大事だと思う、と言っていたんだ………。
「それから俺自身、好きとかそういうのがよく分からなくなった時期があって。菜月に偉そうに意見した時があったけど、あんな風に考えられるようになったのも、割と最近なんだ。」
「そうだったんですか…」