第2章 トラブル
まあ、近くにいたときもお互い忙しいし、そんなそんな、毎日会ってたわけじゃない。それでも…やっぱ遠いわ、うん。九州は遠い。電話とかメールだとそんな距離は感じないけど、ふらっと顔見に行ける距離じゃないじゃん?飛行機でも2時間はかかるし、真夜中とか、絶対無理だし。
でも、春…くらいかな。向こうも新入社員?入ってきて忙しいって言ってたのに、いきなり夜、確か11時くらいに
【今、東京にいます】
って。超びっくりしたよね。俺、そのとき友達と飲んでたんだけど、メール見てすぐ店出た。で、行ったらホントにいるの。びっくりだよ。どうしたの!?って。全然来るなんて聞いてなかったし、何か急な出張か何かかなって思うじゃない。
そしたら
『…会いたかったの』
って。彼女。ホントに普段の仕事帰りのカッコで、旅仕様とかじゃないの。全然。次の日も仕事なのに。
もうね、うわぁ~って。も、どうしようって。俺。ホント参ったね、あん時は。
そのままウチ連れて帰って。その日は、ホント一晩中彼女のことギュ~ってしてた。せっかく来たんだし、もっといっぱい話とかすればいいのに…なんだろね。ほとんど喋らなかった。もう何か、愛しくて仕方なくて、ただ、抱きしめてた。抱きしめて、ところ構わずキスしてた。…うん。ずーっとキスしてたな、あの日は。俺酒臭くてゴメンねって言いながら(笑)。
…うん。好きってパワーってすごいなって。会いたいって思ったら、距離とか関係ねえなって。所詮日本だしなって。うん。思い知ったよね、あの時は。まあ、俺もいつかやり返そうとは思ってんだけどね?
なんて思い出してたら、もうすぐ約束の時間。
あ~、ホント緊張してきたっ。ていうか顔がニヤけてきた。ヤバいな。
ところが
「…」
10分経過。でもまだ来ない。ずーっと、バカみたいに俺、ずーっと20分前から改札の方見てんの。あっこから出てくるはずだから。でも一向に彼女らしき姿は現れない。見逃してはないと思うんだけど…。
どうしたんだろう。予定の飛行機に乗れなかったとか?電車のトラブルとか?それとも…まさか、多香子自身にトラブル…!?