第16章 仕草
「香坂ちゃん教科書ありがとー!」
お昼休み友達とお弁当を食べようとしていたら教科書を抱え現れた木葉くん。
苗字でもちゃん付け呼ばれるのは何となく
恥ずかしい。
「これからは忘れないようにしてね。」
木葉くんに注意すると彼は凄く嫌そうな顔をした。
注意されるの嫌なのかな?
「香坂ちゃんが俺に優しいから甘えちゃうんだよね~。ねぇ、この鶏の竜田揚げ頂戴!」
いつの間にか木葉くんは私のお弁当から鶏の竜田揚げを手掴みで奪っていた。
私あげるなんて言ってないのに。
……まぁ別にいいけど。
一口で竜田揚げを頬張る木葉くん。
指に付いた油を舐める仕草が何とも色っぽくて彼にドキッとしてしまった。
「この竜田揚げ美味いね!俺竜田揚げ大好きなんだよねー。香坂ちゃん料理上手!」
木葉くんに誉められ私は嬉しくて浮かれてしまっていた。
「ごちそうさま。どれも美味かった♪」
暫くして木葉くんは帰って行った。
「……理緒~何浮かれてるのか知らないけどさ、自分のお弁当見てみなよ。」
一緒に居た友達が呆れ加減に話しかけて来る。
「へ?お弁当?……あっ!」
お弁当の中身は全く無くなっていた。
私が浮かれてる間に木葉くんが全部食べてしまったらしい。
「ひどーい!私一口も食べてないのに!
……しょうがない、購買部で何か買ってくる。」
「いってらっしゃい!」
友達に見送られ私はお昼を買うため購買部へ向かう。
途中購買部帰りの木葉くんに会った。
「あっ!木葉くん、私のお弁当全部食べたでしょ!」
「だって香坂ちゃん俺がお弁当に手を出してても止めなかったじゃん。食べていいのかと思ってた!」
「う¨っ」
確かに浮かれてて気づかなかった私が悪いんだけどさ。
「これやるよ!元々香坂ちゃんに持って行くつもりだったし。今度俺にもお弁当作ってよ!一緒に食べたいなぁ~。鶏の竜田揚げ大盛でね♪」
そう言って木葉くんはニィっと笑って
私に焼きそばパン持たせ行ってしまった。
…………お弁当か。
木葉くんは軽はずみで言ったのかもしれない。
でも作ったらまたあの仕草見れるかな。
私は木葉くんの仕草を思い出してしまい
一人照れてしまった。