第1章 屋上
……今日は福永くん来ないかな?
私には友達が居ない。
今の時期寒くてみんな殆ど足を踏み入れない
屋上がお昼休みの私の居場所。
でもたまに同じクラスの福永くんが屋上で
ご飯食べてるの。私が今居るこの場所で。
ここが一番風が来ないのを福永くんも
知っているのかな?
私は福永くんが来ない事を祈りつつ
お弁当箱をあけた。
「いただきます。」
一人でお昼はもう慣れたけどやっぱり寂しいな。
黙々とお弁当を食べてるとカサカサと袋の様な音がした。
音がした方を向くと福永くんがひょっこり顔だけ覗かせていた。
福永くん来ちゃった、退かないと!
「……………ごめんね。」
私は福永くんに頭を下げ
食べていたお弁当を慌てて仕舞う。
「…………ここで食べなよ。」
福永くんは隣に座りお弁当を食べ始めた。
私も彼の言葉に甘えここでお弁当を食べる事にした。
「……………屋上寒いでしょ。教室で食べないの?」
「あ……うん……私…友達居ないから……
教室に居づらくて……」
友達が居ないって言葉にするだけで辛い。
ヤバイ……私泣きそうだ……。
私は目に溜まった涙を出してたまるかと
必死に耐えていた。
「ねぇ、香坂さん。俺バレー部なんだけどメンバーに名前以外で何て呼ばれてると思う?」
涙を我慢している私に突拍子もない事を聞いてくる福永くん。
私は声を出さず何だろう?と首を傾げた。
「正解は招き猫!……招き猫に見えるかにゃあ?」
福永くんは手を猫の手のようにして首を傾げおどけてみせた。
「プッ、アハハ!福永くん可愛い!」
私は福永くんの猫の様な仕草に笑ってしまった。そして我慢していた涙もいつの間にか消えていた。
「……やっと笑った。女の子は笑っている顔が一番可愛いよ。」
福永くんは私を笑わせる為におどけてみせたんだ。彼の優しさに触れ胸が熱くなった。
「あの……福永くん……私と友達になってくれませんか?」
「…………よく言えました。」
福永くんはニィと笑って頭を撫でてくれた。
これからお昼はいつも福永くんと屋上で食べる事になった。
たまに膝枕を要求されるけど可愛いから断れない。
私の早まる胸の鼓動が福永くんに気付かれませんように。
End.