第3章 刻を超えて
私の目の前には男たちの怒声や罵声が飛び交っていた。
まるで時代劇みたいな合戦が繰り広げられていて、思考が追いつかない。
何故、私の目の前で合戦が行われているの?
私は知らない声に導かれて歩いていただけなのに……
「夢?」
私は夢を見ているのか……
そうだよね。
これは夢。
そもそも現実にいて暗闇から声が聞こえるわけがない。
まして、時代劇のような合戦の場に私が立っている事がおかしいもの。
夢ならいつかは覚める。
「お前が天女か?!」
「え?」
いきなり手首を掴まれ捻りあげられた。
痛いっ!!
「誰?!」
振り返ると顔に大きな傷がある男が、鬼のような形相で私を見詰めている。
「……面妖な服装。お前が天女だな!!」
「……天女?」
「我が望みを叶えるべくやってきたのか」
何を言ってるの?
意味がわかんないし、掴まれた手首が痛い。
「離してよっ!」
「一緒に来てもらおうか」
力づくで引っ張られてしまう。
なんとか抵抗しようと、足に力を入れるけど地面を削るだけで無駄に終わってしまいそう。
「やだっ!! やめてよ!!」
「騒いでも無駄だぞ。お前の声は誰にも届かん」
確かに周りは、命のやり取りをしている最中。
私の事なんて目にも入らないとは思うんだけど、それでも助けを呼ばないわけにはいかない。
「だれかぁー!! 助けて!!」