第2章 許嫁とカミングアウト
「じゃあ、今日からお前と深夜は許嫁だ」
「深夜に確認取らないのね」
「反論なんてさせないさ」
「随分と横暴ですこと」
「何とでも言え」
「やめておくわ」
「ふん、だろうな」
とてつもなくどうでも良いやりとりを終わらせ、暮人兄さんがソファから立ち上がる。
「後で、深夜に俺の所に来るよ……」
コンコンコン
兄さんの言葉を遮るように、今日、2回目のノックの音。返事を聞く前にドアは開く。
入ってきたのは……
「やっほー」
ちょうど、話題の人物。柊 深夜。
「って、暮人兄さんとお話中か、なら僕は出直すかなー」
と、部屋から出ようとするが
「待て」
暮人兄さんに止められる。
「ちょうど良い。話してしまうか」
「んー? 何が? 」
私は一発で話が分かったが、勿論 深夜は分からない。そりゃあそうだろうね。
「深夜、お前は今日から清華の許嫁だ」
「へっ……」
普段のヘラヘラした顔が驚きの表情に変わる。あまり見ることが無いからレアだ。そんな深夜に目もくれず暮人兄さんはスタスタドアに向かって歩いていく。そしてドアを開けながらいった。
「以上だ。異論は認めない」
バタン。と閉まったドア。シンとした空気が部屋に流れる。それもそうか。つい昨日まで『友達』とか『仲間』とかっていう関係の人といきなり許嫁だなんて。
「ごめんね。嫌でしょう? 将来、私と結婚しろ。だなんて」
「いや、別に僕は……。清華こそ僕なんかで良かったの? 」
「ふふっ。私、暮人兄さんに『深夜とグレン、どっちが良い』って聞かれて迷わず、深夜にしたわ」