第6章 姉妹
とりあえずカラ松の手当てをしなければ。
しかし一応成人男性であるカラ松を私1人の力で運べるわけがない。
どうしたものかと頭を悩ましていると、突然携帯が鳴った。
見るとそれは着信で、相手は思いもがけない人だった。
「もしもし、イヤミさん?何で私の番号知ってるんですか」
《ミーを舐めてもらっちゃ困るザンス!!》
「ストーカー容疑で訴えますね…ところで、いまどちらにいます?」
電話をかけてきたイヤミさんの用事は分からない。
しかしもし近くにいるのなら、彼なら救急病院の場所と移動手段くらい貸してくれそうな気がして、思わず聞いていた。
困ったら頼れと言われていたことだし。
《今ザンスか?………の後ろザンス》
「へぇ、じゃあ近い………え?!後ろ?!?!」
返ってきた予想外すぎる言葉に振り向くと、そこにはイヤミさんが。
しかもなんということだろう、人がたくさん乗れそうなワゴン車に乗っていた。
「こんな夜中にどうしたんですか?それ」
「レンタカーザンス、これを今から返してくるザンスよ……って、ちょちょ!!チミ、なんで突然乗り込んで来るザンスか?!降りてちょ!!!」
「ごめんなさい、そこ邪魔なのでちょっとどいてもらえますか」
「し、シェーッッ!!?」
そんな好都合な車に乗り込まないわけがない。
私の目の前でドヤ顔で話す彼を見るや否や、運転席のドアに手をかけた私は中からイヤミさんを引き摺り下ろした。
突然のことで反応しきれないイヤミさんは地上に転がり、その隙に私は運転席に座る。
一応運転免許は持っている。
自分の車を持っていないから取って以降1度も運転していないけど、まぁ大丈夫だろう。
「さ、イヤミさん。そこのカラ松後ろに乗せて下さい。あと救急病院の場所を教えて頂けるとなお助かります」
にっこりと笑って頼むと、彼は何でミーがと文句を言いつつもカラ松を車に乗せる。
「この貸しは高いザンスよ」
冗談めかして言う彼のナビゲートに合わせてアクセルを踏み込んだ。