第7章 焦り
白かった髪は真っ赤に染まっていた。
雪華に駆け寄ると、もうすでに意識はなかった。
雪華のそばの女どもは
「わ、私のせいじゃないわ!!」
と言うだけだ。
こいつらは、人の命より自分のほうが優先なのか?
狂ってる。
人間どもは、こんなにも愚かなのか。
「黙れ……!!!」
もういい。雪華を守るためなら。
俺は人間の姿から悪魔へと、本来の姿になった。
女どもはますます青い顔をした。
だが、逃げられては困る。
意識を目に集中させる。
そして、女どもを一気に睨みつける。
俺のこの姿を見られて、そのままにしておくわけには行かないしな。記憶を消した。
女どもは気絶し、その場に倒れこんだ。
丁度いい。うるさくなくて済む。
運転手は…壁にぶつかった衝撃で気絶か…。
問題ない。そのままにしておこう。
そして…
「雪華…」
俺は名前を呼んだ。
反応はない。
もう、息をしているのかすら怪しい。
かろうじて肩は動いているが、いつ止まるかわからない。
なんとか、なんとかしなくては。
俺は悪魔だ。
本来なら、死にかけの人間がいたらとっとと魂をいただくのがスジってもんだ。
でも今の俺は、雪華の死が、怖くて仕方がなかった。
雪華を支える手が震える。
雪華を…雪華を助けないと。
どうすればいい。どうすれば…!!
額から汗が垂れる。
考えれば考えるほどいい考えが浮かばない。
「落ち着け亜久斗!!!!!!」
自分に自分で喝を入れる。
深呼吸。
…よし。
考えはまとまった。
あとはやるだけだ。