My important place【D.Gray-man】
第39章 夢現Ⅲ
「じゃれ合うのは構わんが、あまり長居はしておれんぞティキ。あ奴が戻ってくるからのう」
「あ。そうだった」
あやつ?
って誰。
口を挟むワイズリーに、可笑しそうに笑っていたティキの表情が止まる。
「よいか、雪。御主のメモリーは一度ワタシが閉じた。じゃが"今"だけだ。またいつなん時、その兆候がくるかはわからんからの。早めにこの場を出ることだ」
「この場を…出る?」
「ラースラの覚醒は俺らと違って時間が掛かる。一日じゃ治まらねぇんだよ。その間はさっきみたいに全神経をメモリーに嬲られる。そんな姿、教団で隠しきれねぇだろ?」
「ま…待って。だからちんぷんかんぷんなんだって…っ」
ご丁寧に説明してくれるのはあり難いけど、二人の言ってることが全然わからない。
何、ラースラの覚醒って。
全神経を嬲られるって何、怖ろしい。
…まさかあの怨念みたいなもの?
涙して叫ぶことしかできなかった自分を思い出して、思わず身震いする。
「…なぁワイズリー」
「なんだ?」
「なんで雪は"こんな"状態なんだ?」
身震いする体は、未だにティキの腕で囲われたまま。
強く束縛してくる力はないから、さっきみたいな恐怖感はもうないけど…。
身震いが肌で伝わったのか、あやすように背中を撫でられた。
…少し、ほっとする。
この人の腕の中は温かい。
………というか"こんな"って?
「いくらまだ覚醒してないからって、俺らに対して無知過ぎだろ。双子も接触したってのに、なんでこんなに記憶が曖昧なわけ」
「むぅ……恐らく、雪自身がノアの自我を拒否しておるからだろうのう」
「拒否?」
「うむ」
二人の会話に黙って耳を傾けてみる。
だけどやっぱり、わからないことだらけだった。
双子?
接触?
どうやら私の話をしてるみたいだけど…拒否ってなんだろう。
何かが、引っ掛かる。