My important place【D.Gray-man】
第9章 黒の教団壊滅事件Ⅲ
「さっきゾンビになってた人達の中に、リーバーさんや室長もいたよね…」
「……」
「もしかして…この教団内で感染してないのって、私と神田だけなんじゃ──」
「言うな」
ずりずりと、腹這いで狭い通気口の中を進む。
最悪の状況を予想して言えば、先を進む神田に止められた。
神田も同じことを考えていたのかもしれない。
嵐の深夜、停電した広い広い教団本部。
何処ともわからない通気口の中で、科学班の薬で体が小さくなってしまった神田と二人。
希望は皆無です。
「もう外に出るしかないな」
「でも亡者の群がまた道を塞いでいたら?」
「突っ切る」
それこそ自殺行為なんじゃ…。
「神田の六幻は? イノセンスさえあれば、多少は状況もマシになるんじゃ」
「あれは科学班のラボん中だ。コムイが亡者の群で埋まってたのを確認してる」
まじですか。
どうしよう、本当に解決策なんて見当たらない。
ラビにワクチンを作るって約束したから、簡単に諦められないけど。
本当にお先真っ暗です。
「ここから降りられる。とにかく一度出るぞ」
這いずっていた床に備品室と同じ扉を見つけて、神田がそっとその扉を外す。
「…よし」
顔だけ下げて辺りを伺った後、軽い身のこなしで神田は下へと飛び降りた。
後に続いて飛び降りれば、其処は予想以上に狭い部屋──…狭っ。
「トイレ?」
「みたいだな」
辺りを見渡せば、四方八方囲まれた狭い壁。
降り立った場所は便座の上。
紛れもなく個室トイレの中だった。
あの病棟のトイレといい、公共トイレはどこも同じ造りだから、何処の階のトイレかはわからない。
耳を澄ませば僅かに遠めから聞こえてくる、亡者の呻き声。
どうやら離れた場所に、ゾンビ化人間がいるらしい。
「しっ」
静かにするよう促す神田に従って、声を潜める。
そのままじっと待機をしていれば、やがてその呻き声は遠のいて…何も聞こえなくなった。
「…大丈夫かな」
「気配はない。合図したら出るぞ」
「うん」
ドアに身を寄せる神田に、頷いた時。
──カツン、
聞き覚えのある足音を、聞いた。