My important place【D.Gray-man】
第38章 幾哀心
「何食堂の前塞いでんだ、お前ら」
「あ。噂をすればなんとやら」
「だな」
「…あ?」
ふわふわ心を浮かせながら笑っていれば、聞き慣れた低い声が割り込んできた。
マリと共に目を向けた先には、眉を潜めて立つ話題の中心人物が。
「丁度良かった。ユウ、ご飯食べよ! マリと一緒に」
「別にいいけど…つかなんだその手」
「え? 何が?」
「何マリにべったりしてんだよ」
マリの大きな腕を握って催促すれば、ユウの目がそこで止まる。
いいじゃない、これくらい。
私は今、絶賛マリに癒され中なんです。
「マリと私は運命共同体だから」
「は?」
「ねー、マリ」
「まぁそういうことだ」
「話が見えねぇんだよ笑って誤魔化すな」
笑いながら腕を引いて食堂に入れば、マリも大人しくついて歩きながら賛同してくれた。
その後ろを渋々ユウもついてくる。
眉間に皺を寄せてるのに、声を荒げないのは相手がマリだからかなぁ。
…流石マリ。
やっぱりユウにとって、マリは特別なんだと思うよ。
「何食べよっかなぁ。ユウはなんにする?」
「蕎麦」
「…それ朝も食べたじゃん…」
「んだよ別にいいだろ」
「駄目だぞ神田。蕎麦だけじゃ足りない栄養もあるからな」
「煩ぇな、好きなもん食って何が悪」
「あ、本日のディナー鴨のソテーだって! 美味しそう!」
「オイ待」
「ならこれにするか」
「オ」
「すみませんジェリーさん、本日のディナー三人前でっ」
「前菜も付けてくれ」
「仲良くシカトすんじゃねぇよテメェらそういう意味の共同体か!」
結局声を荒げてしまったユウだったけど、なんだかそんな雰囲気も楽しくて。ついついマリと笑ってしまった私は、気付けずにいた。
手にした銀のトレイに一瞬映った、白い人影に。