My important place【D.Gray-man】
第36章 紡
『そうそう。神田くんには伝えておこうと思ってね』
『なんだ?』
『雪くんのことなんだけど──』
任務報告に行った司令室で、コムイから聞いた街でのノアとの接触。
それが他でもない雪だったと聞いた時は驚いた。
教団で働いてるから敵と遭遇しても可笑しくはないが、リナ達が雪を見つけた時にはノア野郎に捕われていたらしい。
聞けばエクソシストに間違われただとか。
あの面子で一緒にいりゃ、間違われても仕方ないかもしんねぇが…。
『……ノアの…あの双子のことを、教えてもらったの』
ノアの過去を教えてもらうなんざ、一体どんな話をしたのか。気にはなったが、それ以上に気掛かりだったのはその心。
同情じゃないと、こいつは言った。
雪の性格は知ってる。
俺達エクソシストにも興味を持とうとしなかった奴だ。
そいつがノアに対して同情なんて抱くはずがない。
『……哀しいって思った。その過去を知って…他人事には思えなかった』
だからこそ、その言葉は本心なんだろう。
「何、気なんて許してんだよ…」
それはノア野郎だけじゃなかった。
リナが見せてきた写真に写っていた、馬鹿兎やクロウリーに見せていた雪の表情もそうだ。
今まで周りに見せてこなかったそういう顔を、俺に向けてくれるようになったのはいいが。
そういうもんを他の野郎共にも晒してんのは、いい気はしない。
…そんな感情を他人に持ったことは初めてだったから、上手い気持ちの処理の仕方なんてわからなくて、静かに深い寝息を立てている目の前の顔に小さな悪態だけついてやった。
「…はぁ、」
初めて抱いた気持ちだが、これがどういうもんかは知ってる。
「ったく…面倒かけさせんな」
紛れもない独占欲だ。