My important place【D.Gray-man】
第7章 黒の教団壊滅事件Ⅰ.
「……何、これ」
見知った、広い教団の食堂。
見知った、机や椅子が立ち並ぶ中。
見知った、エクソシストや科学班や護衛班や探索班やら皆の姿があって。
「ガァアァア…」
「グルルル…」
知らない顔して、彷徨いてました。
口から涎や血を垂れ流しながら、顔や体の血管を浮かび上がらせて、獲物を狙うような目で彷徨く様はまるでゾンビのよう。
何これ映画の撮影とか?
教団って内装雰囲気あるもんね、撮影依頼きてもおかしくないよね。
それとも曲のPV撮影とか?
「スリラー」みたいな曲ですか。
あれ私も好きですよ名曲ですよねっ
「って違う」
ふるふると首を横に振って、現実逃避しそうになる思考を止める。
食堂に辿り着くまでに、マリみたいな状態の研究員に何人も会った。
だけど一般人なら思考が回っていない分、動きも単調だから逃げ遂せることができて、なんとか此処まで来たんだけど──
「…逃げたい」
食堂はまるで亡者の群。
呻き声を上げながら、ゾンビの如く殺気を放っている沢山の人々。
その中にはティエドール元帥やソカロ元帥達の姿まであった。
エクソシストを更に束ねる、上の存在。
イノセンスとの同調が100%を越えた臨界者である"元帥"と呼ばれる人達。
そんな実力者までゾンビ状態。
これを私にどうしろって言うんですか。
いえ、言われてもどうにもできません。
「見つかったら、絶対襲われる…」
想像してぶるりと体が震える。
どんなに動きが単調でも、元帥相手じゃ流石に敵わない。
恐る恐る食堂を覗いていた扉から体を離す。
巨大な爆発音は恐らく元帥達が放った攻撃らしい。
此処は駄目だ。
他の場所でまともな人を捜そうと、背中を向けた。
「アレン…ッ!」
その時。
確かに、その名を呼ぶ声をはっきりと聞いた。
「ジョニー…ごめん…今度こそ、駄目、みたいだ…」
「何言ってんだよ…ッ! アレン!」
慌てて食堂に視線を戻す。
亡者と化した研究員達が囲む、その中心。
元帥の攻撃を喰らったのか、瓦礫と化した床の上で倒れている少年を支える人影が見えた。
一人はエクソシストの白髪の少年。
一人は科学班の眼鏡の男性。
あれは…アレンとジョニー…っ?