My important place【D.Gray-man】
第6章 異変
拡聴器である大きなヘッドホンを耳に装着している、大柄な男性。
神田と同じティエドール部隊に所属している、盲目のエクソシスト。
ノイズ・マリ。
「マリ、よかった…っ」
知った人に出会えたことに、ついほっとして笑顔で歩み寄る。
「ねぇ、さっき凄い爆発音を聞いたんだけど。何が起こってるか、マリは知ってる?」
大柄な体は長身な神田より更に高く、近寄れば上を向く形で首が曲がる。
それでも威圧なんて感じないのは、きっとマリの優しい性格が成せることなんだと思う。
自然を愛し、動物を愛し、人を愛す。
だからこそあの暴君な神田と同じ部隊でも、早々衝突なんてしない。
「…マリ?」
いつもならその顔に優しい笑みを称えて、応えてくれていたマリ。
なのに何故か返答がない。
怪訝に見上げた彼の顔は、歪に血管を浮き上がらせていた。
「ハァアアァ…」
人のものではないような吐息を吐いて。
「マ──痛ッ」
知らない人なら不信感を抱いていたかもしれないけど、相手はあのマリだから。何かあったのかと不安が先立った。
伺うようにもう一度名前を呼ぼうとすれば、それより早く強い力で腕を掴まれた。
な、何?
掴んだ私の腕を持ち上げるマリ。
その動作を目で追えば、私の腕に近付けた口を開けて───
「っ…!」
ぞくりと殺気に似たものを感じて、反射的に身を捩る。
ファインダーとして働く為には、最低限の身体能力も必要。
この教団で毎日鍛錬して身に付けた技を使って、巨体から抜けるように体を捻らせてマリの背後を取った。
「何、マリ。どうしたの…っ?」
振り返ったマリに再度問いかける。
「ガルルル…」
だけど返ってきたのは、人の言葉なんかじゃなかった。
ピキピキと顔や体に血管を浮かび上がらせて、口からは涎が零れ落ちる。
盲目故によく瞑っているその目も、ギリギリまで見開き焦点も合っていない。
その様はとてつもなく異質だった。