My important place【D.Gray-man】
第31章 嘘と誠
「……何かあんのか」
「え?」
「言いたいことがあるなら言え。お前すぐ呑み込むだろ」
はっきりとした言葉じゃないけれど、核心近くを突く神田の言葉に、思わず目を止める。
…そうだよね。
こんなこと聞いたら、そう思ったりもするよね。
「……」
「…おい」
思わず黙り込む。
そんな私に痺れを切らしたのか、呼びかけてくる。
でもその眉間に皺は寄っていない。
声も強く催促するものじゃない。
…待ってくれてる、ちゃんと。
私のこの面倒な性格を、知ってくれてるから。
そう思うと、胸の奥がきゅっと痛む。
痛いけど、どこか甘い痛み。
「…言いたいことは………ある、よ」
膝を抱いた手元を重ねて、指先を強く握る。
そこに視線を落として。
神田のことを思うから言えないけれど、"嘘つき"にはなりたくないから。
「…簡単には、言えない…けど……伝えたいことは、ある」
今はまだ私自身、心も体も不安定な状態だから言えないけど。
もし本当にノアになってしまったとして、もしそんな自分を私自身が認めて、抱えられるようになったら。
──…その時は、神田に云おう。
教団には言えないけど、神田には…ちゃんと私を見ていて欲しいから。
ちゃんと私を、見せていたいから。
「ただ神田が私と約束してくれるなら、だけど」
「…なんだ、その約束って」
「…………絶対に誰にも言わない。私と神田だけの秘密。どんなことになっても、その秘密はお墓まで持っていくって約束してくれるなら」
神田は意志の強い人だから。本気で約束してくれたら、きっと守ってくれる。
それなら最悪教団にノアのことがバレてしまっても、神田も知っていたことは本人が黙っていてくれる。
そうなれば教団から、神田もノア側の人間かと疑われることはない。
完全に、私の我儘で身勝手な押し付けだとは思うけど。
…それなら神田の生きるこの場所を、私が奪わなくて済むから。