My important place【D.Gray-man】
第5章 夢Ⅱ
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ゆっくりと頭が覚醒した。
辺りを伺わずとも、まだ暗いから朝方じゃないことはわかる。
なんで起きちゃったんだろう…。
「…っ」
額の傷が僅かに痛む。
ズキズキと一つ一つ痛みを刻むように。
帰ったら医務室で痛み止めでも貰おうかな…。
「はぁ…」
なんだか夢を見ていたような気がするけど、思い出せない。
溜息混じりに体を反転させる。
視界が壁一面から、部屋の内装に変わる。
暗い部屋に、ぼんやりと映る家具や壁。
神田の後ろ姿もそこにはあって、最後に見た時と変わらずベッドに凭れて座っている姿のままだった。
…流石にもう寝たよね?
そう思うと無性に好奇心が湧いた。
目を瞑って待機してる姿は見たことあるけど、寝ている姿は見たことなかったから。
暴君の寝顔、ある意味見てみたい。
眉間に皺とか、寝てても怖い顔してたりするのかな。
そんな純粋な好奇心で、横になったまま神田の背中に寄る。
「…神田?」
小さな声で呼び掛ける。
返答はない。
だ、大丈夫かな。
身を乗り出して、神田の横顔をそっと伺う。
サラサラの黒髪から覗く、整った目鼻立ち。
瞑った目元は長い睫毛が伏せられていて、寝息は耳を澄ませないと聞こえない程に静かなもの。
その寝顔はなんだか穏やかなものだった。
「…うん」
静かにベッドに体を戻す。
美形だから綺麗な寝顔だとは予想していたけど…年相応というか、幼さが少しだけ垣間見えていた。
初めて見た神田の寝顔。
なんか、照れる、かも。
ごめんなさい盗み見して。
「……」
横になったまま、そっとその背中を見つめる。
手を伸ばせば簡単に触れられる距離。
でも見えない心の距離は、きっと深い。
「…興味本位じゃないよ」
ぽつりと、自分の口から零れた声は小さなものだった。
そう、今度こそ口にして伝えたら。
神田はまた拒絶するのかな。
その時、私は。
今度こそ逃げないでいられるだろうか。
「覚悟、してるから」
どうやってその覚悟を伝えたらいいのか。
上手い言葉なんて思いつかないけど。
いつか。
ちゃんと神田に伝えられたら、いいのにな。