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My important place【D.Gray-man】

第5章 夢Ⅱ



「…痛、」


 そっと腹部のシャツを捲る。
 露わになった脇腹には、予想通り被弾した傷跡が残ったままだった。
 見た目は小さな凹みのようだけど、被弾跡は被弾跡だ。
 放っておいたら感染症にかかるかもしれない。
 ただし弾は神田の血のお陰か、AKUMAの作った産物だからか、体内には残っていないようだった。

 軽く消毒をして分厚いガーゼと包帯で傷口を覆う。
 出血はもう落ち着いていたけど、激しく動けばまた血が溢れる心配はある。
 荷物内の救急箱じゃ簡易的な処置しかできないけど…ないよりマシかな。


「わ、また…っ」


 ぬる、と額を何かが伝う感覚。
 触れればまた、僅かだけど手には赤い血が付着した。
 出血で言えば被弾跡よりも、この額の傷の方が重症かもしれない。
 絆創膏でも貼っておくかな…。


「これでよし」


 とりあえず絆創膏を貼って荷物を片す。
 そうだ、ついでに報告書も作ろう。
 疲れてたけど、神田を待たずに寝る訳にもいかないし。
 ベッドに背中を預けて、床に座ったまま報告書作成に取り掛かる。


「そういえば、これどう寝たらいいんだろう…」


 ふと疑問が浮かんで、周りを見渡す。
 狭いシングルの部屋。
 一人用のそこで二人の人間が過ごせない訳じゃないけど…流石にベッドは二人で使えない。


「というか、」


 あの神田と同室で一晩なんて。
 やむ終えない事情があるから仕方ないけど。
 …バレたら教団内の神田ファンクラブの方々に殺される気がする。


「口止めしておかないと」


 想像して思わずぶるりと体が震えた。

 こっそり教団の女性研究員の方々の中で設立されている、神田のファンクラブなるもの。
 エクソシストというだけで尊敬の念は持たれるから、そんなクラブができても不思議じゃないけど。
 あれは若干アイドルか何かのファンクラブのようにも思える。

 神田が間違っても口を滑らせないように、しっかり注意しておかないと。
 私も命は惜しいです。


「でも、あの暴君のどこがそんなに…」


 いいのか。

 言葉になる前に、浮かんだのは"美形"の二文字。

 それか。
 それなのか。
 あのオブラート皆無な物言いも、すぐ手が出る暴力癖も、美形で全て許されるのか。

 なんて理不尽な世界。


「…美形なんて嫌いだ…」

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