My important place【D.Gray-man】
第23章 2/14Valentine
じわじわと胸に広がる思いに、ふと気付く。
そっか…なんとなく今わかった。
神田があの大量の花束の贈り物を認めた時、僅かに切なくなった心が。
羨ましかったんだ。
神田にそうやって認めて貰えて、プレゼントを受け取って貰える人達のことが。
私もそんなふうに神田に受け止めてもらいたいって思ったから。
「…ありがとう」
そんな感情のままに礼を言えば、軽くチョコが付いた指先を唇に当てていた神田の視線が向く。
「普通、礼を言うならこっちだろ」
「それは…ほら、日頃の感謝の気持ち。ありがとうって。イギリスだと言葉を贈るのが主流だから」
本音は、それだけじゃないけれど。
笑いかければ、深い闇色の目がじっと私を見返してくる。
手首をずっと握っていた手が離れたかと思えば、私の首の後ろにさらりと回された。
軽く引き寄せられると同時に、神田の顔も近付く。
呆気ない程のあっさりとした動作に驚く暇もなく、その顔は私の視線を通り過ぎて耳元に口を寄せた。
「カードなんて持っちゃいねぇが──」
神田の口が言葉を紡ぐ。
地面を叩き付ける雨音に掻き消されそうな程、小さな声で。
「 」
耳に届いたどことなく優しい低い声は、確かに感謝の言葉を口にした。
後に残されたのは、静かに降り続く雨の音色だけ。