My important place【D.Gray-man】
第21章 地獄のティータイム
あのティータイムという名の拷問地獄のような時間をまた過ごすなんてごめんだけど。多分、同じことがあっても言わないとは思う。
誰かに縋って生きることは、とうの昔にやめたから。
それにこんなことで神田の気を引きたくなんてない。
心配して下さいと自ら言っているみたいで、そんな自分が嫌になる。
「お前はよくても俺はよくねぇんだよ。…俺の知らないところで、あんな顔するな」
頬に添えられていた親指が、ほんの少し上がって私の目元をなぞるような仕草を見せる。
泣いてなんかいないのに、涙を拭き取るような、そんな仕草。
「一人でなんでも抱えようとすんな。きつい時くらい頼れ」
意を決したような声じゃない。
静かな声で告げられた言葉だった。
なのに、きついかどうかなんて、そんな弱音微塵も吐いていないのに。
まるで今の私の現状を見透かすように、神田の言葉は的確に胸の奥を突いてきた。
わなわなと口元が下がって、また情けない顔になりそうになる。
今まではそんな顔、見られたくなんてなかったのに。
──神田になら。
そう思える自分がいた。
「…っ」
頬の傍にある神田の手に、自分の手を添える。
──あのね、私。神田に伝えたいことがあるの
ほんのりと冷たいのに、そこから伝わる体温は私の顔を熱くする。
──自分の体で起きてる、おかしなこと。考え出すと不安になって、夜も眠れなくなる
強くはないけれど、離さないようにその手を握る。
…言いたい。
──私の体が、私のものじゃなくなっていくようで…怖い
言いたい。伝えたい。
この不安を、神田に吐き出してしまいたい。
「…あの、ね。神田」
触れる手から伝わる温もり。心地良い冷たさなのに、温かく感じる。
木漏れ日の差すその中庭で、私の体を温めてくれる日溜まりと同じように。
温かくて、心地良くて、ずっとその中に浸っていたい。
「私──…」
ずっと、ずっと。
「…私、」
離したくない。
ずっと感じていたいから。
「……私、ね」
だから。
それを壊すことになるかもしれない。
そんな言葉は、吐き出せなかった。