My important place【D.Gray-man】
第21章 地獄のティータイム
多分こうしてルベリエ長官が私にしつこいのは、消えた元帥の事件が関与してるからだろう。
立入禁止のこの場所に、無関係なただのファインダーが元帥のゴーレムを連れて来たら怪しくも見える。
でも私、間違っても事件の犯人じゃないですから。
「そうですか。致し方ありませんね」
ふぅ、とわざとらしく長官が残念そうに息をつく。
その時、くいっと軽く髪を引っ張られた。
見れば私の髪を一房咥えたティムが、まるで帰ろうと言うかのように宙を飛んでいる。
よかった、どうやら満足したみたいだ。
「じゃあ私はこれで…っケーキご馳走様でしたっ」
急いで残りのケーキを口に詰め込んで、慌てて席を立つ。
女としてはしたないかもしれないけど、そんなこと気にしていられない。
これ以上この威圧ある尋問、受けたくないです。
「別に、そこまで気に止めている訳ではないのですよ」
半ば飲み込むようにケーキを咀嚼しながら、ティムに引かれるまま急いで部屋のドアノブを掴む。
ドアを開けて廊下に出ようとした時、やんわりと追いかけてきた長官の言葉が私の足を止めた。
「しがない探索班の者など、気に止める必要もない」
口調は変わらず、穏やかなもの。
でも私のことを示すその言葉は、まるで虫けらを見ているかのような冷たさだった。
「ですが私も監査役を務めている身。小さな芽でも、怪しいものは摘み取らねばなりません」
足を止めたまま、振り返る。
見えたのは、優雅な動作で椅子を引き、席を立ってこちらを見てくる長官の姿。
「そのゴーレムが此処にクロス・マリアンを求めて来ることは知っています。貴女が言ったことも嘘ではないのでしょう」
こつ、こつ、と音からしても高級感を感じる靴音が響く。
「本来なら別段目に止める程のことでもない。だが一つ、引っ掛かる」
目の前でぴたりと止まる足音。
姿勢良く傍に立つ長官を、恐る恐る見上げる。
「貴女のその時折見せる不安定な目の揺らぎは、一体何を隠しているのか」
「──!」
まるで心の奥底を突くような言葉に、息を呑んだ。