My important place【D.Gray-man】
第22章 金烏.
頭上を飛ぶティムを追っていると、元々目的地は近くだったのか。すぐに其処に辿り着いた。
人通りのほとんどない細い廊下を進んだ先、其処は立入禁止になっている場所。
クロス・マリアンが消息を絶った部屋がある場所だ。
その部屋の開いた扉の中に、見知った輪郭が映る。
月城の背中。
部屋の中に体を向けて、廊下を背にして立っている。
ティムは月城の所に案内したかったのか。
「──どうしました、黙り込んで」
その部屋に近付く途中、耳に届いた声は月城のものじゃなかった。
部屋の中から聞こえてきたのは、ここ最近教団で聞いている声。
耳障りな、形だけ丁寧な言葉。
「その口は飾りですか?」
責めるようなその言葉に、向かう足が速くなる。
近付くにつれてはっきり見えたのは、月城の背中とその前に立っている人物の顔。
…なんでルベリエが月城といるんだよ。
「……」
ルベリエの言葉に月城は何も応えない。
微動だにしないその小さな背中に、伸ばした手が触れられる距離に達した時、
「おい」
もう俺の手はそいつの腕を掴んで、強く後ろに引いていた。
「っ!?」
驚いて声を上げる間もなく、バランスが崩れた月城の背中を受け止める。
そのまま肩を引き寄せて、ルベリエの目から離すように背中に隠す。
「こいつに何してる」
そうして目が合ったその顔を睨み付けた。
マルコム=C=ルベリエ。
中央庁のトップであるこいつは、リナのトラウマでもある存在。
こいつが教団に足を運ぶ度に、怯えるようにリナは俺の所にやって来ていた。
何も言わず黙って俺の傍にいるリナに、逃げてきた理由はわかってたがそれを尋ねたことはなかった。
ルベリエに苦手意識を持っているが、そういう姿を周りに見せたがらない奴だったから。
多分触れてほしくなかったんだろう。
だから俺も特に聞いたことはない。
「おや。これはこれは…神田ユウではありませんか」
白々しく俺の名を呼ぶそいつに、虫唾が走る。