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My important place【D.Gray-man】

第21章 玉兎.



 それに。

 頭の隅にちらつく、去り際に見たルベリエ長官の顔。
 私を見て、私を見ていなかった冷たい目。

 …あの人はきっと私にノアの可能性があることを知ったら、迷わず死刑宣告するだろう。
 漠然とだけど、それは確信に似た思いだった。
 仲間でさえも聖戦の道具としか見ていないなら、敵に情をかけるはずもない。
 教団にこのことを伝えて、私が神田の傍にいられる可能性は限りなく低い。

 …それは嫌だ。

 例え手に入らなくても、今こうして感じている日溜まりのようなこの場所を壊したくない。
 例え自分が一番じゃなくても、神田から貰えるこの場所だけは守っていたい。


「…なんか、泣きそうになっちゃった」


 吐き出せない代わりに、せめて少しでも自分の本音を伝えたくて、添えられた手に触れたままはにかんだ。

 嬉しくて泣きそうになる。
 そんな感情を教えてくれたのは、目の前のこの人だった。


「──…」


 頬に触れていた手が、ピクリと震えた。
 私を見下ろす黒い眼が、僅かに揺れる。


「…え?」


 頬に触れていたその手が後頭部に回されたかと思えば、強くはないけれど確かな力で引き寄せられた。
 引き寄せられて、とんと顔が触れたのは神田の胸元。


「…神、田?」

「……」


 急に近付いた距離に、辿々しくその名を呼ぶ。

 返事はない。

 さらりと滑る綺麗な神田の黒髪が、私の頬をくすぐる。
 私の髪に指先を差し込んだまま、引き寄せたその手は優しくて──…でも確かな力で、放そうとはしなかった。















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