My important place【D.Gray-man】
第4章 溝(どぶ)に捨てたもの
「着いたぞ、下りろ」
「…本当に着いた…」
それから全く速度を落とさずに歩き続けた神田は、夜中のうちに方舟のある街まで辿り着いていた。
私と私の荷物を背負ってる状態で。なのに息一つ切れてない。
凄いとしか言いようがないんだけど…。
「…っ、」
地面に足を付ければ、力が掛かった脇腹が僅かに痛む。
でも歩けない訳じゃない。
後はアレンの方舟で一気に帰れるから、然程問題もなさそう。
「キュフン」
「…あ」
荷物を背負っていると足元に鼻を擦り付けてくる、わんこが見えた。
結局ずっとついて来ちゃったな。
「お前、待ってる人はいないの?」
屈んで頭を優しく撫でる。
その体に付着した赤黒い血は、誰の者だったのか。真相はわからないけど…もしかしたら、この子を可愛がっていた人のものかもしれない。
「おいで。連れて帰れないけど、教会の人に頼んでみるから」
この街の施設でもなんでもいい。この子の面倒を見てくれる人がいれば。
そう思って声を掛ければ、わんこは尾をひと振りして変わらない懐っこさで付いてきた。
「──夜遅くまで疲れ様です」
「いえ、司祭さんこそ」
教会に訪れると、到着した時と同じ。出迎えてくれた司祭さんが笑顔で立っていた。
「すみません。一つお願いしたいことがあるんですが、よろしいですか?」
「ええ、なんでしょう?」
ついて来てしまったわんこのことを頼めば、司祭さんは返事一つで了承してくれた。
よかった、優しい人で。
「もう墓地で彷徨いたりしたら駄目だよ」
「クゥン?」
頭を傾げる、わんこを撫でる。
この愛嬌があれば、そのうち新しい飼い主もすぐにできそうだし。安心かな。