My important place【D.Gray-man】
第20章 もしもの話
「あ。あそこじゃない?」
やがて見えてきた、立入禁止のドア。
未だに"キープアウト"のテープが貼られたその部屋は、クロス元帥の消息が絶たれた場所だ。
「失礼、します」
一応断りを入れて、鍵のかかっていないドアを開ける。
不用心にも思えるけど、元帥ともあろう人が亡くなったかもしれない部屋だから、元より私情で近付く人はいないんだろうな。
一人部屋にしては大きな内装。
高級感のある家具は必要最低限だけ揃えてあって、真っ暗な部屋はシンと静まり返っている。
「ティム」
アレンが呼んだ先は、部屋の窓際だった。
べっとりと大量の血痕が付いた、ガラスが割れた窓際。
既に乾いてパサパサの茶色い血痕は、長い時間経過を物語っていた。
クロス元帥がこの部屋で消息を絶ってから、そろそろ一ヶ月になる。
未だ、事件は解明していない。
「おいで、ティム」
窓際に近付いたアレンが再度呼ぶ。
窓際の茶色い血痕の上に、金色のゴーレムの姿はあった。
まるでその血の主を捜すかのように、乾いた血痕に丸い球体を押し付けて声もなく縋っている。
そんなティムの姿に、胸の奥が少し痛んだ気がした。
「…ティム、ほら」
その場から動こうとしないティムに、身を屈めてアレンが手を伸ばす。
その手がティムに触れると、やっとゴーレムはアレンへと体を向けた。
羽は使わず小さな手足で、アレンの掌に乗る。
「…ティムのクロス元帥への探知機能って、作動しないの?」
アレンの隣で同じように屈んで、そっと金色の球体に触れてみる。
小さな体を指先で撫でれば、ティムはゆらりと軽く尾を揺らして応えてくれた。
ティムキャンピーは、体内にクロス元帥を探知する機能を持ってる。
それがあったから、以前消息不明な元帥を日本の江戸で見つけることができたんだとか。
「どうやら、そうみたいです」
「そっか…」
じゃあやっぱり…クロス元帥は、もうこの世にいないのかな。