My important place【D.Gray-man】
第20章 もしもの話
視線を足元の廊下から、アレンに向ける。
どんな言葉を投げかけたらアレンのそんな心を晴らせるのか、正解なんてわからないけれど。
これだけは確かに言えることがある。
「私はアレンじゃないから、その気持ちを理解できるなんて言えない。でも、アレンは頑張ってると思う」
自分でも得体の知れない不安が付き纏う。
私の今の状況は、アレンと似ている。
方舟を操れた原因もわからないまま周りの疑心暗鬼の視線を受けて、それでもそんな教団の人達を守る為に、エクソシストとして戦っているアレン。
私だったら、そんな人達を守ろうとする気力なんて早々持てない。
赤の他人を心底思いやれるような、そんな綺麗な心なんて持っていないから。
果たしてそれが本心かわからないけど、そうやって変わらず戦場で命を張っているアレンは、充分過ぎるくらい頑張っていると思う。
「誰よりも頑張ってる。だから心配になるんだけどね」
今ならアレンの気持ち、少しだけならわかるから。
「大したことは言えないし、私はエクソシストじゃないから力にもなれないけど。心配くらいはさせて」
簡単に踏み込んだことは聞けないけど。
弱ってる時に誰かに気にかけてもらえることは凄く大きなことなんだって、神田に教えてもらったから。
「…ありがとうございます」
アレンの口から漏れたのは感謝の言葉だった。
でもその顔に浮かんでいたのは笑顔じゃない。
きゅっと唇を噛んで、眉尻を少しだけ下げて、どことなく不安の残る顔。
…やっぱり少なからず迷いや戸惑いはあるんだろうな。
ここ最近は本当に、立て続けにアレンの周りは色んな問題が起こっているから。平気でいる方が無理だと思う。
そこに上手い返しは思いつかなかったけれど、アレンとの間にある空気はさっきよりも軽くなってくれた…気は、した。