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My important place【D.Gray-man】

第3章 夢Ⅰ.



 両肩に手を置いて、顔を寄せる。
 普段は高い位置にあるから、こんな至近距離では見えない神田の頭部。
 サラサラの髪の合間に揺れる、赤い髪紐。

 …なんだか珍しくてじっと見てしまう。


「…神田の体って、特別なの?」


 不意に感じた疑問は言葉にしようと意識する前に、勝手に口から零れていた。

 AKUMAのウイルスを撃ち込まれても、効かない体。
 あっという間に怪我も完治する肌。
 他のエクソシストとは違うことは知っていたけど、詳しいことは何も知らなかった。

 …興味がなかったから。
 知ろうともしなかった。


「あの血…リナリーの結晶形のイノセンスとは、違うみたいだけど」


 私に飲ませたのは、自分の血だった。
 脇腹の痛みはまだあったけど、前の任務で怪我した肩の痛みは完全に消えていた。

 …きっと神田の血を飲んだお陰だ。
 あれは血を媒体にして発動させる、新しいリナリーのイノセンスとは違う。


「…知ってどうする」


 問いに返されたのは、答えじゃなかった。


「興味本位で近付くな。迷惑だ」


 前を向いたまま、冷たく返される言葉。
 それはわんこに中途半端な慈悲を与えるなと、言っていた言葉と重なって。


「……」


 返す言葉がなかった。

 興味本位じゃないって。理解したいんだって。
 そう言えたら、どんなに楽か。

 わんこの時は簡単に言い返せたのに、人相手になると、こうも言葉は出てこない。

 踏み込もうとするのは、きっと簡単だろう。
 でも相手の心を開かせるのは、きっと難しい。

 土足で神田の懐に踏み込んで、微塵も傷付けずにその心の奥底に触れられるような。そんな言葉も方法も、私は知らない。
 だから、簡単にそんな言葉は吐けない。


「…ごめん」


 選んだ言葉はいつも通り、取り繕うだけの言葉で。





『俺は嫌いだ』





 そんな私を嫌いだと言った、神田の言葉が頭を過ぎる。

 …うん。
 私も嫌いなんだ。
 こんな自分。

 それでも。
 変わりたいなんて、今まで思ったこともなかったのに。


「…ごめんね」


 なんだか、胸がツキリと痛んで

 そんな言葉しか吐けない自分が、嫌で堪らなかった。















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