My important place【D.Gray-man】
第18章 ロザリオを胸に
…もしかしてアレンもこんな気持ちだったのかな。
千年伯爵の方舟を操れたアレンは、もしかしたらノアの手先じゃないかと噂されたりもした。
そんな疑心暗鬼を抱えた周りの空気に耐えて、仕方ないと笑っていたアレン。
笑いたくもないのに、笑う顔。そんな顔になるのも仕方ないと思う。
誰もそんなアレンを責めたりなんかできない。
でも今はアレンじゃなく私自身のことだ。
アレンと私で決定的に違うのは、エクソシストじゃないということ。
ただの人間の私に、アレン程教団を説得できる何かは持っていない。
…どうしよう。
教団側に身を置く者ならば、このことはコムイ室長に報告しなきゃならない。
でも報告したその後は?
私はどうなるんだろう。
調べられるくらいならまだいい。
あちこち体を弄られるくらい、過去に経験済みだから。
でも、それだけで済まなかったら?
エクソシストとノアは対極にある存在。
故に教団にとってノアは敵だ。
もし調べて私がノアだと確定してしまったら、教団の為にファインダーとして働いていたからといって優遇されるはずもない。
最悪、待っているのは"死"。
そう思うと体が竦んだ。
死にたいだなんて思ったことはないけど、強く生に固執したこともない。
ファインダーの道を選んだ時点で、いつか戦場で死ぬ運命もあると受け入れた。
AKUMAのウイルスが入った銃弾を受けた時も、ああこれで死ぬんだと、漠然とそんなことを感じたりもした。
でも今は、死ぬのが怖い。
「…っ…」
だって、死んだら。
もう神田の傍にいられない。
「…なんで…今更…」
誰かの為に、何かの為に。そんなことを思って教団で生きたことはなかったのに。
それを望んだ途端、こんなことになるなんて。
本当に笑えない。
どうしよう。
どうしたら。
どんなに考えても、答えなんて出ない。