My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
最初は、触れ合うだけの口付けだった。
一度、二度とそれが続いて、すぐに深いものへと変わる。
「ん…っ」
交わる互いの熱と熱。
縋るように雪が神田の首に腕を回せば、長い足が体を押すように踏み出す。
無し崩すようにベッドへと沈む二つの体。
絡めた片手はシーツに押さえ付けられるようにして、握り締められた。
「は、んぅ…っふ、」
浅く、荒い息遣いが室内に零れ落ちる。
ちゅくりと粘着質なリップ音を立てて、離れる唇。
熱を帯びた互いの視線が絡み合う。
言葉は何も要らなかった。
ただ触れ合っていたい。
互いの熱を分かち合って、混じり合いたい。
ようやく重なることのできた心を、確かめ合うように。
上半身を起こした神田が、コートを脱ぎ捨てる。
襟のボタンを外しながら、再び覆い被さり雪の口を塞ぐ。
ぎしりと、ベッドが鳴く。
熱い吐息が、天井に歌う。
プキュウと唸る声が、地面で跳ねる。
(…ぷ?)
待て。と神田の思考が止まる。
凡そ二人だけの情事に似つかわしくない音がした。
確かに音を拾った方角に目を向ければ、地面に放ったコート。
その一部が、こんもりと小さな山を作っている。
(オイ待て)
それだけではない。
小さな山が、もぞもぞと動いているではないか。
見覚えのないようで見覚えのある光景に、ひくりと口角が痙攣する。
「ユ…?」
身を起こしベッドから下りる神田に、頬を染めたままの雪が不思議そうに顔を起こす。
それでも止まることなく、神田は床のコートを引っ掴むと勢いのままに引き剥がした。
「プヒュ!」
中から飛び出してきた黒い塊を、持ち前の反射神経で掴み取る。
じたばたと短い手足を暴れさせているそれは、余りにも見覚えがあった。
肌色のカモノハシのような嘴に、ビロードのような黒い毛並み。
円らな丸い瞳は、神田を睨み付けるようにして敵意を見せている。
それは、自由にしてきたはずの魔法動物。
「え……ニ、フラー…?」
雪に懐いていた、そのニフラーだった。
「ついて来やがったのかテメェ…!」
「えぇええぇえええ!?!!!!!」