My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
『君達は幾つだって夢を見ていいんだ』
その可能性を秘めているからと、まだ幼かった頭に優しい声で教えてくれた。
(…ティエドール元帥)
神田とバディを組まされるようになったばかりの、まだ幼い頃の記憶。
それでもあの日、頭を撫でながら伝えてくれた彼の優しい微笑みは、不思議と思い出せた。
翳した掌の隙間から輝く星々。
その手を握れば、望む光は掴めるのだろうか。
「此処にある星空のランプ、全部欲しいな」
「は?」
「そしたらもう道に迷うこともない」
「……」
握った掌を胸元にそっと下ろして、振り返る。
雪の言葉の意味をそのまま捉えたのか、神田の顔は怪訝なもの。
しかし何を言っているのかと馬鹿にしている目ではない。
どう答えるべきか、神田なりに考えている目だ。
「む…無理だろ…」
しかし柔軟且つ頭脳明晰なラビとは違い、咄嗟の機転も上手い言葉回しも使えないのが神田だ。
目線を泳がせながら辿々しく答える姿に、雪の口元が綻んだ。
「ぶっふッ」
「オイ」
「いや…っ真面目に考えてくれたんだなぁと」
「じゃあなんで腹抱えて笑ってやがる」
「ごめ…っユウが可愛いこと言うから」
「あ?」
「いっ痛い痛い。耳引っ張らないで」
「キピィ!」
「テメェは引っ込んでろチビナス。俺とこいつの話だ」
ぷりぷりと雪の腕の中で抗議するニフラーだけが負の感情を現していた。
雪の顔は変わらず綻んだまま、然程痛くもない神田の耳を掴む手を握り返す。
「じゃあ、代わりに思い出を頂戴」
「? なんだ思い出って」
「この星空のランプを忘れない思い出」
「……」
「小母さんの下で、星空に願掛けをしていた私を忘れるくらい。ユウとの思い出で、いっぱいにしたい」
雪の言葉に、再び考え込むように沈黙を作る。
「……」
「……」
「……」
「…えっと。ユウ? そこまで深く考」
タンッ
「!?」
余りにその沈黙が長い為また悩んでいるのかと、雪が助け舟を出そうとした。
途端に、背中を支えていた手が離れる。
と同時に両足をいとも簡単に片足で払われ、バランスを崩した体は傾斜を転がり落ちた。