My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
「季節で見える星空は違っていて、とっても綺麗だった。きらきら宝石みたいに輝く砂粒達が、まるで神様が私に作ってくれたランプ代わりのように見えた」
「……」
「寂しくないよ。悲しくないよって。見守っていてくれてるような…だから毎日、神様に向けて願掛けをしたの」
どうか、父と母が無事でいますように。
どうか、父と母が迎えに来てくれますように。
「教団で働いている両親が、無事でいますように。そしていつか私を迎えに来てくれますように。この寒くて辛い世界から、連れ出してくれますようにって」
「……」
「でもどんなに祈っても、神様は願いを叶えてはくれなかった。両親は私を迎えに来てくれなかったし、私の知らない所で命を散らせていた」
それから、神というものは信じなくなった。
「でも神様を憎むのはお門違いで…単に私が弱かっただけ。何かに縋らないと生きていけなくて、自分からは行動を起こさず期待だけして。…そんな自分を、思い出すの。暗い部屋の中から見上げる星空は」
じっと天井を見上げ続ける雪の目線は、一度も神田と重ならなかった。
何かを求めるように、ただ無言で見上げ続けている。
その横顔に感情らしいものは見えなかったのに、その瞳は何故か物寂しげに見えた。
「だから…苦手なの」
ぽつりと落ちゆく雪の音。
無言で雪を見ていた神田の目線が上がる。
同じく天井扉を見上げて、南京錠留めの形の金掛けには鍵が付いていないことに気付いた。
「掴まってろ」
「え? わっ」
膝の間に座らせていた雪の体を、軽々と片腕で尻と腿を支えて抱き上げる。
急な揺れに驚いたものの、神田から俵担ぎをよくされていた身としては、まだ優しいもの。
困惑しながらも、雪はその首に腕を絡ませ掴まった。
「な、何?」
「プキュウッ!」
「変なことはしねぇよ」
階段を上がる神田の後を、雪の膝から転がり落とされた二フラーが苛立ち混じりに追いかける。
そんな小動物には目も暮れず、神田は更に埃被った天井へ続く梯子に足を掛けた。