My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
「な、なぁ雪…悪かった、さ。でもユウがいねぇと、コムイの許可が下りなかったから、さ…」
それでも自分にも非はある。
どうにかできはしないかと恐る恐る声をかけるラビに、雪からの反応はない。
そこに反応を示したのは、意外にも神田だった。
「馬鹿兎は無関係だ。そいつが何を言おうが、俺の立ち位置は変わらない。責めるなら俺を責めろ」
「え…?(何それ庇ってんの? まさかオレのこと庇ってんのユウ? 人生初庇い!?)」
衝撃である。
「…わかってる」
ぽつりと、ようやく雪から零れた反応に、神田とラビの目が止まる。
「自分の立場も、ラビの立場も…ユウの立場も、わかってる、よ」
くっと唇を噛んで、でも、と言い掛けた言葉を雪は呑み込んだ。
我儘を通せる立場ではないことも、そんな我儘を言える子供ではないことも、わかっている。
わかっていても、心は簡単には比例しないのだ。
「…我儘、言ってごめん」
ようやく上がった雪の顔には、薄い笑顔が貼り付いていた。
「それでも聞いてくれて、ありがとう」
その笑顔がどんなものかは、礼を向けられたラビが一番よくわかっていた。
自分が教団に入団したばかりの頃に、貼り付けていたものと同じだ。
一歩周りから距離を置いて、丁度良い関係を築いて。
本音は誰にも悟られないように。
(…違う)
雪の笑顔が見られたらと願った。
しかし見たかったのは、そんな笑顔ではない。
「我儘なんかじゃねぇさ」
徐に歩み寄ったラビの手が、雪の手を掴む。
「一度も使ったことのない有給を使うことが、仕事の息抜きに好きな所に行くことが、どこが我儘なんさ。全部普通だろ。当然の感情だろ」
だから、とその手を引きラビは雪に背を向けた。
まるでその身を庇うかのように、神田を前にして。
「いーかユウ。これはオレと雪の社畜からのストレス発散旅行だから! 監視はいいけど邪魔はすんなよ! 元々そういう契約だし!」
「ら、ラビ?」
戸惑う雪を背に庇ったまま、構わずラビはビシリと神田を指差し宣言を上げた。