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My important place【D.Gray-man】

第49章 つむぎ星に願いを



「ティキは元気だぞ。しかし今は会わぬ方が良い」

「なんで?」

「奴の虫の居所は悪い。今会ったら決心が鈍るとも言っておったから、自ら会いに来ることはなかろう」

「何、決心って…何かあったの?」



 ちゃぶ台に手を付いて、雪が身を乗り出してくる。
 その表情にはありありと不安の色が表れていた。



「心配か?」

「決まってるでしょ」



 即答か。
 思わずまた緩みそうになる口元を引き締める。
 これはデザイアスの言うように、神田ユウだけが生命線ではないかもしれんな。

 面白い。



「その反応、ティキ本人の前で見せてみよ。面白い反応が見られるかもしれん」

「何、面白いって…ティキで遊ぶのやめたら」

「遊んでなどおらんぞ。愛だ、愛」

「……胡散臭」

「のの…」



 その冷たい目は止めて欲しいのう…。



「でも、私からは会いに行けないし…いつも会いに来てくれるのは、ティキだったから」



 ようやく置かれた湯呑みに触れて、しかし萌黄色の水面に映る自分の顔を雪はじっと見つめた。



「どうやったら私から、会いに行けるのかな…」



 …よもやそんな台詞を聞ける日が来ようとは。
 こんな雪の姿を見れば、ティキの虫の居所も多少は良くなるかもしれんのう。



「会いたいか?」

「…うん」

「その思いを忘れなければ、必ず会える。名前を忘れぬことだ」

「名前?」

「呼びたい時に、呼べるように。ティキの名前をしっかりここに刻んでおけ」



 さすれば好機はいつか必ず訪れる。
 ティキは待つのに嫌気が差したようだが、あんなイノセンスに雁字搦めにされた雪を見てしまえば致し方なかろう。

 軽く触れる程度に雪の額に触れて、そのまま頭をひと撫でしてやる。



「じゃが今回はワタシがあ奴に声を掛けておいてやろう」

「本当?」

「ああ」



 面白そうだしの。
 と口にすればまた雪に冷たい目を向けられそうなので、笑顔だけ返しておいた。



「ありがとう」

「礼など要らんぞ」

「私が言いたかっただけだから。ティキには色んな場面で救われたけど、ワイズリーにも感謝してるところあるんだよ」

「む? そうなのか?」

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