My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
「──ということで、会いに来た」
「何が"ということで"なの冒頭にさも言葉が付いてるように話すのやめて。何も付いてないから。出会い頭いきなりの台詞だからそれ」
「出会い頭早々ツッコミが強いのう。元気そうで何よりだ」
「待って会話が噛み合ってない感じする。会話の基本は挨拶でしょ。ハイこんにちはっ」
「まぁまぁ、此処へ座るが良い。どれ、茶でも出そう」
「会話が噛み合ってない!」
八畳程の和室の空間。
ちゃぶ台の横に置かれた座布団を叩いてやれば、文句を言いつつも渋々と雪はそこに腰を下ろした。
この場が何処であるか、何故自分は此処にいるのか、気にしている様子はない。
うむ、それで良い。
「茶は何が良い。緑茶か? 玄米茶か? 梅昆布茶もあるぞ」
「なんでそんな渋いチョイスなの…」
「日本人である御主には、こちらの方が舌に合うかと思ってのう。違ったか?」
「確かに私は日本人だけど、日本のことにそこまで詳しくはないし…大体、父は日本人だけど母は──…」
「む? どうした?」
茶葉を入れた急須に湯を注いでいると、不意に雪の声が萎んだ。
顔を上げれば、複雑な表情と相見える。
此処は雪の思考の世界。
魔眼であるワタシだからこそ、入り込むことができる。
ロードに言われての訪問だったが、それを逐一説明する由もない。
それよりも目の前の雪の反応が気になった。
「…ねぇ、ワイズリー」
「なんだ?」
「ワイズリーの目には、私は日系フランス人に見えたりする?」
「フランス人の血が流れているのか? それは意外じゃった」
「…やっぱり、見えないよね…」
それが雪には気に掛かることらしい。
「自分の人種に不満でもあるのか?」
「…不満、とかじゃなくて…ただ…」
「ただ?」
そこから先は言葉と成しえなかった。
口を噤む雪の顔は、何も納得していない。
素直になれるはずの己の世界でも言葉にできないとなると、雪自身がその答えを見つけられていないのだろう。
一体どのような不穏分子なのか。
純粋に気になったので、更に覗いてみることにした。