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My important place【D.Gray-man】

第48章 フェイク・ラバー



底冷えする冷たい瞳で微かに口角を上げるティキの表情に、ロードはくすくすと静かに喉を慣らした。

これだから彼は面白いのだ。
白の彼も黒の彼も全く重なりはしないのに、同時に二つの顔を持つ。
そんな魅力を持つティキに、雪が溺れてくれたなら。



(そういう"世界"にしちゃえばいっか)



偶然などあり得ない。
必然的に創り出せば良い。

痛みを与えれば、人は意思を止める。
傷を作れば、人は心に穴を空ける。
そこを埋める何かを与えれば、人はそれに固執する。

飴と鞭は両方存在して、初めて意味を持つものだ。
必要とあらば、雪の心を裂きもしよう。
ほんの少し傷を付けるくらいなら、優しく手当てを施せば跡も残らない。



(さて、どうしようかなぁ)



ぽふんとソファに身を沈め、楽しそうに思考を巡らす。
不意に感じた視線に目を向ければ、ワイズリーと目が合ったので笑顔を向けておいた。

頭の中は、新しい遊びでいっぱいだ。




















(ティキの言う通り、悪魔なのはロードじゃわい…)



可愛らしい外見とは反する内なる狂気に、ワイズリーは人知れず納得した。
この場で誰よりも敵に回して恐ろしいのは、他ならぬこの少女だと。

それでも彼女に賛同してしまうのだろう。
それが雪の奪還に繋がるならば。



「ねぇワイズリ〜」

「…なんだ?」



不意を突かれ、無邪気な声に呼ばれた。
内心驚きはしたものの、顔に出さずに問い返す。
ワイズリーのように他人の頭を覗き見る能力は持ち得ていないのに、妖艶に笑いかけるロードには何事も見透かされているような気になる。



「手始めは君だね」

「の?」



何が?と首を傾げれば、同じに、こてんと愛らしい動作でロードも首を傾げた。



「君は直接雪の心に触れられるんだから」



羨ましいなぁと笑う可憐な声に、圧を感じる。
他人の心に直接触れられるのは、ロードの持つ能力も似たようなものだ。
しかしそれは、常に他人を騙し自滅へと誘う性悪なもの。

愛らしく無邪気な子供の持つ、残酷さのように。



「その心を捕まえてきて」



無垢なる声で、彼女は命を下した。















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