My important place【D.Gray-man】
第48章 フェイク・ラバー
「良い顔だな」
「ウム。少しは元気出たかい?」
普段通りの彼らだったが、やはり気に掛けられていたらしい。
ほんの少しだけ、道先が見えたようなものだ。
しかしこれ以上心配はかけ続けられないと、雪もまた笑顔で応えた。
「ありがとう。少し、すっきりした」
その答えで充分だったらしく、双子はにんまり笑みを深めると視線を眼下へと変える。
「よし。それじゃあ行くか兄弟」
「ああ」
「え?行くって?」
「決まってるだろ」
「いざ黒の教団本部探検だ!」
「本当に行くのっ!?」
「当たり前だろ?」
「ユキは道先案内を頼むよ!」
「でもこんな姿だと目立───わあッ」
くんっと箒の先が下へと向く。
ひゅるりと緩やかな弧を描いて高度を下げていく箒に、雪は目の前のジョージに再びしがみ付いた。
「大丈夫、危なそうな所は避けるから」
「特にカンダだな。ユキを病室から連れ回してると知られたら、また斬り掛かられそうだ」
「っ」
ぴくりと雪の唇が震える。
しかし音は発さず噛み締めるそれに、フレッドとジョージは気付かない。
「だからユキ、カンダがいそうな場所は回避で頼むよ」
「此処へ来てから、ふらっと何処か行ったっきり見ないもんなぁ」
「………」
ジョージの背中に顔を押し付けたまま、雪は口を結び続けた。
神田がいそうな場所と聞かれて心当たりは幾つかある。
しかし果たして、彼は現在其処にいるのだろうか。
(…わからない)
話をしたいと言った神田を、拒否してしまった。
だからあんな結果になってしまったのだろうか。