My important place【D.Gray-man】
第48章 フェイク・ラバー
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鋭く尖ったクロウリーの爪が、ジャスデビの足元を狙う。
ガリガリと床を抉りながら進む攻撃に、左右に二人の足は地を離れた。
「っとォ!ンなおっそい攻撃当たらねェよ!」
「ヒヒ!ノロマになったんじゃないのぉ?吸血鬼~!」
抉られた床は大きな損傷を見せたが、紙一重でかわしたジャスデビには傷一つない。
へらへらと左右から笑いかける二人に、AKUMAの血を飲み鋭い形相へと変わったクロウリーは怯まなかった。
「フン。一度かわしたくらいでいい気になるな…!」
右足を軸に体を反転させると、クロウリーが第二撃を向けたのはドレス姿のジャスデロだった。
次々と打ち込まれるクロウリーの拳を、後方に飛び跳ねながら避けるもドレスの裾が邪魔をする。
「ヒ!ヒ!?」
「どうした、腰が退けてるぞ小僧!」
「チッおいオッサン!オレを無視すんじゃ───!」
ガキン、と鋼鉄を思わせる重い斬撃がデビットの足元を襲った。
「つぅ…!」
今度は紙一重でかわせなかった。
デビットの脹脛をざくりと裂く赤く長い線。
「テメ…なんでピンピンしてやがる…!」
「あれくらいでやられるか」
懐に入り込み刃を振るったのは神田だった。
身に纏うドレスは至る所裂けてはいるものの、その下の皮膚は綺麗なまま。
ジャスデビが氷の刃で傷付けた跡は、たちどころに消え去っていた。
「神田!そいつの足止めは任せた!」
「はぁ!?なん…ッゲッ!」
「余所見すんじゃねぇタコ助」
クロウリーに噛み付かんとする前に、デビットの鳩尾に六幻の柄の一打が入る。
「ヒ!デビットォ~!」
「貴様らの特徴は、一度戦い交えたから知っている!」
「ヒィ!?」
駆け寄ろうとするジャスデロの足止めをするように、鋭利な牙を繰り出すクロウリー。
噛み砕く勢いで牙を振るう長身の壁を前に、ジャスデロは身を竦め後退った。
「その想像力は桁外れな力を生み出すが、二人揃って発揮する能力だ」
"絆"の名を持つ双子のノア───ジャスデビ。
その能力は"実現"。
互いの脳が同時同一の想像をした時、それは現実に形を成して現れる。
故に足並みを揃えさせず、身を寄せさせず、心と体をばらばらにしてしまえば、ジャスデビの真の能力は発揮されない。