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My important place【D.Gray-man】

第48章 フェイク・ラバー



「でもアレン君も上手だよね」

「え?」

「お世辞言うの。ハロウィンで街に出た時も、上手に周りの人からお菓子強請ってたでしょ?」

「ああ。でもあれは本心ですから。相手は綺麗な女性ばかりでしたし、褒めるのは当たり前ですよ」

「ふぅん?…そっか」



相槌を打ちながら頷くリナリーの目線は、再びリッチモンドへと戻る。
その横顔を目線で追うと、アレンは一度唇を結んだ。



「…リナリー」

「ん?」

「あの時の女性も綺麗でしたけど…僕は…リナリーの方が、綺麗だと思ってます」



ハロウィンの時に聞いた流暢な言葉ではない。
ぎこちなくも告げるアレンの言葉に、リナリーの丸くなった目が向く。



「…お世辞?」

「本心です。…今のリナリーは、もっと、綺麗です」



ハロウィンの時に聞いた機転の利いた言葉でもない。
それでも実直に告げるアレンの言葉に、リナリーの頬は朱色に染まった。



「アレン君…」

「って、急にキザ過ぎますねっなんかっ」

「う、ううんっそんなことないよっ嬉しい」

「本当?」

「うん。アレン君に褒められるの、凄く嬉しいから」



朱色の頬はそのままに。
ふわりと微笑むリナリーに、アレンの顔もまた照れの残る笑顔へと変わる。
互いの表情はマスカレードマスクで読み取れないが、浅いつき合いではない。
声色から伝わる感情は、普段感じ慣れていない、こそばゆくも温かい気持ちになれるものだ。



「その、じゃあ…また今度、出掛けませんか?ハロウィンの時みたいに」

「街にってこと?」

「はい。リナリーの私服姿はいつも綺麗ですし…仮装じゃない、そっちの姿もまた見たいなって」



教団内での普段着とはまた別に、街に出る時の彼女はジェリーも認めるお洒落女子である。
以前、雪やラビ達も混じえ街に出掛けた日のことを思い出しながら、そっとアレンの手がリナリーの指先に軽く触れる。
そんな些細なことにも照れが混じる。
しかし嫌なものではなく、心地良い。



「うん。私も…また、お出掛けしたいな」

「本当?」

「ふふ。勿論」

「よかったっ」



触れた指先が、どちらともなく握り合う。
弾むアレンの声に、リナリーの笑い声がメロディのように重なった。



『よくねぇよ』



そこへ圧すように割り込んだのは低い声。

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