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My important place【D.Gray-man】

第18章 ロザリオを胸に.



 ひらりと、顔の横を上から落ちていく薄い桃色の花弁。
 視線で追えば、足元に音もなく落ちる。
 見えたのは足元に散らばる、同じく薄く色付いた花々。
 まるで自分の周りを囲うように、至る所に咲き乱れている。

 蓮華の花。


「…神田?」


 じっとその花を見つめていると、気にでもしたのか。俺を呼ぶ声。
 視線を向ければ、其処には怪訝そうに俺を見る月城の姿があった。


「なんでもない」


 目での問いに、それだけ応えて視線を外す。

 此処は教団内部の廊下。
 間違っても、こんな花が咲き乱れるような場所じゃない。
 俺の周りを囲うように咲き誇るその花々は、俺だけにしか見えないもの。





『神田、まだ花がみえるかい』





 昔に言われた。





『囚われてはいかんよ、それは幻だ』





 俺の中に残る記憶の残像が、生み出す唯一のもの。

 それでも。










"ねぇ、この花知ってる?"










 これは俺とあの人とを繋げるもの。
 それを切り捨てることなんてできない。


「久しぶりだね、アレンとの任務。ミランダさんなんて、神田は初めてなんじゃない?」

「モヤシだけでも面倒臭ぇのに、無駄足が増えるだけだ」

「またそういうこと言う…アレンの前で言っちゃ駄目だよ。喧嘩になるから」


 呆れた顔で見上げながら、月城が隣をついて歩く。
 この廊下の辿り着く先はコムイの司令室。
 休み明け早々、俺と月城は同じ任務にあてがわれた。
 こいつとだけの任務ならまだしも、聞けばあのモヤシと貧血女も一緒らしい。

 …面倒臭ぇ。


「特にアレンは今、大変なんだから」


 どこか暗い顔で、月城がぽつりと付け足す。
 その言葉が意味成すのは、恐らく…あのクロス元帥の死か。


 あの下らないゾンビ事件の後なんとか引越しを終え、新しい教団本部が設立された。
 其処で最初に起きた事件。何者かによる、クロス・マリアンの抹殺。
 死体を見たという目撃者は警護班の一人だけ。それも一瞬だけで、すぐに死体は何処かへ消えたという。

 元帥の生死さえわからない、謎の事件。

 あの元帥はモヤシと密接な師弟関係にあったらしいから、そんなモヤシの心を気遣ってるんだろう。

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