My important place【D.Gray-man】
第17章 憩.
ゾンビ化事件の最後に見せた、一瞬の笑みとはまた違う。
まるでその外見に見合った、年相応に笑う顔。
思わず魅入って言葉を呑み込んでしまう。
「やっぱり予測不能の阿呆だ」
「………馬鹿にしてるんですか」
「褒めてんだよ、阿呆」
なんとかそれだけ言葉を返すと、神田の目が私に向いた。
その目は、もう私を見て他の何かを見ているような目じゃなかった。
真っ直ぐに私を見て、おかしそうに笑う。
「お前はそのままでいろ」
特に褒められた気はしないのに。
その顔に、その声に。
じわりと顔が熱を帯びる。
「……言われなくても、私は私ですから」
多分、今、顔赤い。
それを隠すように俯いて、なんとかそれだけ返す。
「そうだな」
素直に頷けずに返した言葉なのに、それに対する神田の声は、どこか優しくて。
…そんなふうに笑って、そんな声なんて出さないでよ。
これじゃあいつまで経っても、顔の熱は退かない気がした。
「うーん。まさかあんなに良い顔が見られるなんてねぇ」
湖の畔で、神田と二人。
その初めて見せた神田の表情に、いっぱいいっぱいな私は気付かなかった。
嬉しそうにそう笑って、スケッチブックに木炭を走らせるティエドール元帥がいたことを。
「これは大事に取っておかないと」
元帥がこっそり描いた、私と神田の人物画。
それを見つけた神田が真っ赤な顔して破り捨てるのは、一週間後のことだった。