My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
「───とまぁ、こんな感じ」
「…学生、だと?」
「盗まれたものを探しに、此処へ?」
「うん。だよね」
「ああ」
「雪の言う通りさ」
一部始終、ざっと説明を終えた雪が息をつく。
神田とアレンが彼女から聞いた話はこうだ。
英国寮制学校の生徒である双子のフレッドとジョージ。
其処で盗まれた学校の所持品を探しに、リヴァプールへ赴いていたのだとか。
教団もAKUMAも何も関係ない、ただの一般市民らしい。
「嘘は言ってないよ。一言も」
「そうだとも。なぁ兄弟?」
「ああ、確実に」
「「………」」
雪の言葉にしかと頷き合う双子に、神田の顔色は晴れなかった。
彼の直感が訴える双子への不信感は、未だ感じているのかもしれない。
「ならなんで急に広場から消えやがった」
「あっそうですよ!クロウリーが言うには、雪さんと一瞬で姿を消したとか…」
「そりゃ逃げもするだろう、あんな奇妙な生き物に出会ったら」
「雪は逃げる僕を追い掛けてついて来てしまっただけだよ。地下水道を使えば姿はすぐ晦ませられるだろ?」
スラスラと戸惑うことなく事を説明する双子に、雪は内心感心しながら相槌の為顔を縦に振った。
何かと口が達者なような気はしていたが、未成年で店の起業を成功させている身、その技量は確かだったようだ。
「また縄で縛られて拷問なんて掛けられちゃ堪らないし。雪と一度しっかり言葉を交えたくてね」
「少しばかり彼女のことを借りてたよ。なぁに、可笑しなことはしてない。誓って言う」
トンと胸に拳を添えて笑う双子を渋い顔で観察していた神田だったが、やがて諦めたのか射抜くような視線を逸らした。
「本当か」
「うん、本当。誓って言う」
逸らした目は雪へと向く。
彼女の言葉なら信用することにしたのだろう、神田から放たれていた鋭い気がやっとのことで静まりを見せた。
「じゃあ屋敷で出会ったのは、単なる偶然だったんですね」
「君達の仕事を邪魔したのは悪かったよ」
「僕らにも僕らのやらなければならないことがあるんだ。だからお互いに干渉無しでってことで、雪と話をまとめたから」