My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
「トリシア、顔色があんまりよくないな。休んだ方がいいんじゃないか?」
「ふぅん?…そうだね。ティキの言う通りだ。陽に当たり過ぎたかな」
この豪邸の夫人は、元々病弱な体の持ち主。
ティキの声掛けに傍に顔を寄せたシェリルが、優しくトリシアの顎を指先で持ち上げた。
「でも、お客様にお茶を…」
「大丈夫だよ、メイドにやらせるから。トリシアは部屋で休んでおいで」
「あんなのが傍にいる方が気分滅入るだろうしな」
「ァア!?なん」
「だからぁ!お母様に物騒な顔向けないでってば」
あんなの、と据わった目でジャスデビを指差すティキに、すぐさま噛み付こうとしたデビットの声はロードによって阻められた。
「二人を呼んだのは我輩でもありマス♡気にせずおやすみなサイ、トリシア♡」
「千年公…わかりましたわ。ご迷惑お掛けします」
「とんでもナイ♡いつも美味しい紅茶をありがとうございマス♡」
深々と頭を下げるトリシアに、微笑み片手を挙げる伯爵。
彼がそう言ってしまえば、逆らう者などいない。
ジャスデビ達も口を噤む中、トリシアはメイドに添われながら屋敷の中へと戻っていった。
「ケッ!息が詰まるな、此処の貴族ごっこはよ」
「社長に呼ばれなかったら、こんな所デロ来たくな〜い」
トリシアの姿が見えなくなるのを確認した途端、ドカリと荒々しく空いた席に腰を落とすジャスデビ。
その発言には半分納得だと内心感じながら、ティキは大人しく紅茶を認めることにした。
どうやら二人を呼んだのは千年伯爵とシェリルらしい。
となれば自分は無関係だろうと。
「で、なんでオレらを呼んだんだよ。クロス捜しなら続けてるぜ?」
「何処に行っちゃったか、全然わかんないけどネ…ヒ…」
「バカ言うなよ!」
ジャスデビの主な仕事はクロス・マリアンの捜索。
捜し回っては常に出し抜かれている二人は、未だ一度足りとも彼を捕らえられたことはない。