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My important place【D.Gray-man】

第47章 リヴァプールの婦人



「え?何それ、どういうこと?…まさかティッキー、気になる娘でも…!?」

「別に、そんなんじゃねぇよ。元から見合いは興味ないって言ってただろ」

「でも結婚は何かと便利だよ?パイプを広げていれば、いざという時に駒回りが利く」

「そういう仕事はお前がやれよ、シェリル"兄サン"。俺は千年公の持ってくる仕事で充分」



軽く両手を挙げて肩を竦めるティキは、聞く耳持たずといった様子。
そんな義理の弟の姿に、シェリルは納得のいかない表情のまま。



「あんな趣味の悪い仕事ばかり優先するなんて、ティッキーも物好きだね」



唇を尖らせ、不満を露わにした。



「趣味の悪いとは、言い草が酷いですネェ♡」



中庭のティータイムには、もう一人参加者がいた。
日陰を作るガーデンパラソルの下で、物静かに紅茶を味わう中年男性。
とある界隈でその貴族を知らぬ者はいない。
彼の名は───"千年伯爵"。

ふざけた不気味なピエロのような外見ではなく、極々普通の穏やかな男性。
その容姿と同じく穏やかな声で会話に入る伯爵に、シェリルの表情が変わることはなかった。



「だって千年公、血生臭い仕事ばかりティッキーに任せてるでしょ?美しい僕のティッキーの体が血で汚れるなんて!汚らわしいッ!」

「お前のその思考が汚らわしいんだよ…」



ぞぞっと両手で自身の腕を抱き鳥肌を立たせるシェリルに、同じく褐色の肌にぷつぷつと鳥肌を浮かばせ眉間の皺を一層濃く刻む。
どうにもティキは、このシェリルの潔癖症と美しい者であれば男女問わず愛でる思考が、好きになれなかった。
"兄"と呼ぶのもいけ好かない。
"この場"だからこそ、仕方なく従っているだけだ。



「紅茶のお味は如何かしら、ティキさん」



そこへアネモネの開花具合を見回っていた貴婦人が一人、足音も静かにティキ達の下へと歩み寄る。
大人しい顔立ちをしているが、小さなコスモスのように密かな美しさを兼ね添えた女性だ。



「ああ、美味しく頂いているよ。トリシア」



彼女の名はトリシア・キャメロット夫人。
シェリルの妻でありロードの母の役目も備えている女性である。

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