My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
「ああ、あれか」
トリシアの言葉にすぐに気付いたシェリルとは裏腹に、ティキは不思議そうにキャメロット夫人を見上げた。
客など、今日は自分と千年公だけではなかったのだろうか、と。
「あれは騒がしいから別の部屋に───」
「あぁん!?聞こえてますけどォ!アレってドレですかぁ!?」
「ヒッヒー!デロ達のこと!?ねぇデロ達のことォ!?!!」
「うっわ…兄サン、あれ呼んだわけ…」
「だからアレ呼びすんなや!」
「喧嘩売ってんなら買うぞゴラァ!」
静かな花園のティータイムがぶち壊れるような、けたたましい雄叫びが二つ。
中指を真上に突き立てながらズカズカと庭園に入り込んできたのは、黒と金の頭が二つ。
少年でありながらパンク調のきついメークを常に施している、双子のデビットとジャスデロ。
げんなりとした表情で迎え入れるティキに、二人はすぐさま噛み付いた。
「なんで双子なんて呼んだんだよ」
「偶には彼らにも自分の立場を自覚してもらおうと思ってね」
「ジャスデビだって腐っても貴族だよ~ティッキー」
「だァからァ!腐ってもってなんだアアン!?」
「ムッキー!デロ達は来たくて来た訳じゃないもんね!サバゲーの邪魔して~!」
目の前の双子など見えていないかのように、話を進めるティキとシェリル。
ロードの言葉にカチンと脳天を鳴らした双子は、ほぼ同時に机へと詰め寄った。
「サバゲー?」
「サバイバルゲーム!ンだよ知らねーの?」
「AKUMA相手に狩るんだよ!楽しんだから~♪」
訝しげにティキが問えば、忽ち笑顔へと変わったジャスデロが大きな目を剥き出しに意気揚々と説明し出す。
「あくまを狩る…?」
「もぉ、お母様に変な言葉聞かせないでよぉ~!」
「げべポッ!」
それを遮るように、シェリルの膝からぴょこんと跳んだロードの膝がジャスデロの顔にめり込んだ。
「あの子達の想像遊びだよ。物騒なことを言うのはいつものことだから」
「そ、そう…面白い甥の子達なのね。でもロード、そんな乱暴なことしては駄目よ」
「ごめんなさ~い★」
やんわりと訂正を入れるシェリルに、トリシアの顔にも笑顔が戻る。
しかしその笑みが少しばかり暗いことに、目敏く気付いたのはティキだった。