My important place【D.Gray-man】
第16章 ソレイユ.
「……」
他人を寄せ付けようとしないで、まるで世界を嫌うかのように一人で立って生きている神田。
その姿を思い出して顔が歪む。
前の私なら、こんな感情湧かなかった。
人の抱えるものに大小なんてない。
それぞれがそれぞれ、何かを抱えて何かに縋って生きている。
希望も絶望も人それぞれ、それは他人が簡単に介入できることじゃない。
そんな他人の心を無理矢理こじ開けて、入り込もうとすることは、一歩間違えれば大きな傷跡しか残さない。
それなら最初から触れないに限る。
私は私、あなたはあなた。
無駄に傷付け合うより、取り繕って生きる方が楽だから。
でも。
「……傷付けるだけじゃ、ないんだよね…」
自分を曝け出すことが、どんなに怖くて苦しくても。
それだけじゃないことを私は知った。
望んだ人に認めてもらえることが、受け入れてくれることが、どんなに泣きたくなるくらい心を満たしてくれることなのか。
私は知ったから。
支えたいだなんて、そんな大それたことは言えないけど。
「……」
あの人の、傍にいたい。
一人で立って生きている、神田の隣に。
私はいたい。
それは迷いなき自分の思いだった。
「──……これ、言わない方がいいかな…」
大きな書庫室の隅で一人、再度膝に抱いた資料を見る。
神田の体のことだけじゃなく、色々と余計に知ってしまったような気がして、なんとなく申し訳なく思ったけど。
多分神田のことだから…同情を嫌う性格だし、変な意図は何もないはず。
自分のことを知ってほしいから、じゃなくて。きっと私が知りたいと思った気持ちに応えてくれただけ。
それなら、調べた報告なんて無闇にしない方がいいかも──
「誰に言わない方がいいって?」
「──っ!?」
突如投げかけられた声に、思わず心臓が跳ねた。
「なっ…ん…!」
「よっス」
驚き振り返った視界に映り込んだのは。
明るい髪色に、高い背丈。
片方だけ見える目は、鮮やかな翡翠色。
「夜中にこんな所で調べものなんて、怪し過ぎさ。雪」
次期ブックマン後継者の、ラビだった。