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My important place【D.Gray-man】

第44章 水魚の詩(うた)



「この体の怪我は…その時、イノセンスに拒絶されて…焼かれた、もの……だと思う」

「……」


 雪自身、明確には判断していないのか、曖昧な言葉で説明を続けた。

 ルベリエに連れて行かれたヘブラスカの間で、その身をイノセンスに焼かれたこと。
 十字に浮かんだシンボルのような光の模様が、ノア化した雪の体を拒絶するかのように攻撃してきたこと。

 そのシンボルがなんなのか俺も定かじゃなかったが、似たような模様なら知っている。
 …それは俺自身適合して傍に置いている、装備型イノセンスである六幻だ。
 初めて俺の体に適合して左手の中に現れた時、六幻は似たような模様を宙に浮かび上がらせていた。
 となると、雪の見た模様はイノセンス発動のものと考えて間違いはなさそうだ。


「ヘブラスカ自身も驚いてたから…故意にやったものじゃないと思う。多分、私の中にある…ノアに、反応して…勝手に発動したんじゃないかな…」


 その時のことを思い出しているのか、抱きしめていた雪の体が微かに震えるのを感じ取った。
 その震えは"恐怖"からくるものだ。
…意図的にしているようには見えない。


「……それで、そのノアの力ってやつは、扱えるようになったのか」


 ヘブラスカに体を探られ、再びノアのような風貌へと変わったと言う。
 それで力は得たのかと問えば、雪は静かに首を横に振った。

 雪はまだノアの確かな力を手に入れた訳じゃない。
 だとすれば二人で行ったペルーでの遺跡の任務で、AKUMAに対して放っていた雷に似たエネルギーの咆哮は…偶然の産物だったのか。


「…そうか」


 俺にあのエネルギーはなんだと問われて、雷じゃないのかと雪は応えていた。
 単なる雷には見えなかったから、納得はしたもののなんとなく引っ掛かっていた。

 どこかで見たような気がして。

 それが方舟で対峙したスキン・ボリックというノアの技と同じだと悟ったのは、雪が俺やモヤシの前でノアの姿を曝した時。
 ペルーで雷だと笑った言葉は偽りだったのか。
 あの時はそう愕然としたが、自分で操れないとなると、あれはやはり意図的なもんではなかったらしい。

 俺に嘯(うそぶ)いていた訳じゃない。
 そう悟ると、少しほっとした。

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